ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年10月18日
 Sea of Clouds

 約8年ぶりという。かつてはスウェディッシュ・エモの至宝として知られたLAST DAYS OF APRILの来日公演(10月17日、渋谷club乙-kinoto-)を観たのであった。何はともあれ、初期の名曲であり、あの胸ときめくほどの「ASPIRINS AND ALCOHOL」をやってくれたのが最高に嬉しい、と感じ入ってしまう。基本的には、最新作にあたる『SEA OF CLOUDS』(2015年)のリリースに伴うツアーであるため、『SEA OF CLOUDS』の楽曲を中心にしたセット・リストである、というより、『SEA OF CLOUDS』に見られた現在のモードで約20年に及ぶキャリアの代表曲を再構築していた、という印象を大きくしているように思う。

 若気の至りを思わせるパンキッシュなテンションを多く含んだファースト・アルバムの『LAST DAYS OF APRIL』(1997年)はともかく、アメリカのエモーショナル・ハードコアのシーンとリンクしながら、北欧ならでは、と認識されるような哀感を溢れさせていたサード・アルバムの『ANGEL YOUTH』(2000年)と続く『ASCEND TO THE STARS』(2002年)を経、初来日公演に繋がった5作目の『IF YOU LOSE IT』(2003年)以降、フロントマン、カール・ラーソンのソロ・プロジェクト的に(カール自身のソロ・アルバムも存在するが)美しいメロディはそのまま、広義のギター・ポップに近いスタイルを展開してきたLAST DAYS OF APRILである。『SEA OF CLOUDS』に見られた現在のモードとは、つまり、その延長線であり、カントリーやフォークをも射程に入れたトラディショナルでシンプルなバンド・サウンドのことでもある。

 単純に、枯れた、と喩えられるのかもしれない。が、実際にライヴで確認すると、ちょっとニュアンスは違っている。キーボードなどの装飾は除かれ、あくまでもトリオの演奏でのヴァージョンにアレンジされた過去のナンバーに、それは顕著であった。確かに、強弱のゆるやかなコントロールのみで楽曲の表情に変化を付けていく姿は、いくらか地味ではある。サポートを務めた日本勢のエネルギッシュなパフォーマンスに比べると、なおのこと控えめでもある。しかし、意図された音数の少なさが、センシティヴな面で評価されがちな原曲には乏しい骨の太さのようなものを明らかに浮かび上がらせていたのである。

 おそらく、カール・ラーソンのミュージシャンとしての成熟が、楽曲それ自体を表面上のイメージでは括りきれないレベルへと成熟させていたのである。先に挙げた「ASPIRINS AND ALCOHOL」も同様であろう。スタジオのヴァージョンにおけるキラキラとした青春の色彩とは異なる。絵は一緒であろうと、まるでセピアのカラーに滲ませるかのような筆遣いのアレンジに注意を引かれる。そこに失われたものを見ることもできる。だが、ああ、これが現在のLAST DAYS OF APRILなんだな、と納得させられるだけの魅力が同時にある。さらに気づかされたのは、カール・ラーソンのヴォーカルや美しいメロディばかりではなく、彼が弾くギターのフレーズにもLAST DAYS OF APRILという記名性が意外にハッキリと出ている点であった。エレクトリックでもアコースティックでも、デリケートな(デリケートであるがゆえに、ときには刺々しくなったりもする)心の揺らぎをよく掴まえていたのだ。

 1時間強のステージだったろうか。決して広い会場ではなかったけれど、ほぼ満員の数の観客が集まっていたことを最後に言い添えておきたい。皆、待ち望んでいたんだね。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2016年)
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