ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年08月11日
 ゾンビの星 (ヤングチャンピオンコミックス)

 ギャグ一筋でありながら、息の長いマンガ家だ。浜岡賢次は。しかも、その長いキャリアを通じ、ある種のふてぶてしさを失ってはいないことに恐れ入る。もちろん、『浦安鉄筋家族』のシリーズは、初期の方が愉快だったという向きもあろう。自分にしても『4年1組起立!』こそが最高だと思っているのだから、そうした気持ちもわからなくはないが(お約束を繰り広げるような)安定感と(あの漫☆画太郎でさえもパロディに使ってしまうような)尖った部分とが混在する現在のスタンスを決して否定するものではないのである。

 さて、久々に『浦安鉄筋家族』のシリーズ以外の作品となるのが、この『ゾンビの星』である。近年、エンターテイメントの世界でゾンビはブームではあるけれど、流行に乗じたというより、かねてからあったアイディアを出すタイミングが今まさに回ってきた、という感じなのではないか。作者にゾンビものを含めた映画の影響が大きいことは、過去の作品における登場人物やギャグの数々に顕著であるし、本コミックスの浜岡自身による解説にも明らかである。また、確かにゾンビを題材にしてはいるものの、ホラーの要素はまったくなく、徹頭徹尾ギャグを凝らしているのも実に「らしい」と思わせる。

 20XX年、動きはじめた死体=ゾンビに地球は覆われた。ゾンビに噛まれた者もまたゾンビとなるのであった。生き残ったのは、ただ一人。ひきこもりだったため、部屋から一歩も外に出ることのなかった星はるかだけである。かくしてヒロイン、はるかのサヴァイヴァルが幕を開けるのだけれど、しかし、なぜここまでサスペンスがないか。あくまでもシチュエーションは引用であり、それに対する作者の解釈がいかにコメディとして機能するのかが『ゾンビの星』の根底だからであろう。チャップリンの頃を思わせるサイレントの手法を用いたエピソードは、他の作品にもあったものだが、『ゾンビの星』にも見受けられる。

 換言するなら、借りてきた形式に、浜岡ならではの色合い、アレンジを加えることが転じ、ギャグとなっているのである。浜岡の描くドタバタ劇の要領は、時限爆弾みたいなトラブル・メーカーをどう対処するかにある。それが『ゾンビの星』では、ヒロインであるはるかに一任されているので、マッチ・ポンプに陥らざるをえない。そこに作者の苦心が現れてしまっている。
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