ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年06月16日
 『野性時代』7月号掲載の短編。『海の底』のサイド・ストーリーという体をとっている。『海の底』で活躍した自衛官冬原と、その恋人の物語で、本編とオーヴァーラップする箇所もあるが、荒唐無稽さをともなわない、ひじょうに真っ直ぐな恋愛小説となっている。こういう形で提出されると、この作家の文章のどこがフックとなっているのか、それがわかりやすい。会話や状況の説明に特筆すべき点はない。が、登場人物の内面が、メタ的なポジションにいる語り手(作者)によって、モノローグというのともポリフォニーというのとも違った、口語のなめらかさで綴られてゆくところが、読み手の感情移入を誘うのだ。それはたぶん、ライトノベル的な感性からやってきているのだろうが、現実をフィクションのほうへ引き寄せるのではなくて、フィクションを現実の側へ近づけようとする、そういった仮構性に頼りきらない素養の働きが、有川浩の場合、物語の磁場を強くしているのである。

 『海の底』についての文章→こちら

 『塩の街』についての文章→こちら
 『空の中』についての文章→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書。
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クジラの彼(野生時代7月号より)
Excerpt: 有川浩/著(野生時代7月号に掲載:角川書店刊) 先日『海の底』を紹介したばかりですが、また有川浩さんの登場です。前作『空の中』、前々作『塩の街』も紹介しようと思ってるんですけど、今日はこれを紹介せずに..
Weblog: 怪鳥の【ちょ〜『鈍速』飛行日誌】
Tracked: 2005-07-21 08:37