ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年06月12日
 聖闘士星矢EPISODE.Gアサシン 7 (チャンピオンREDコミックス)

 多分、『聖闘士星矢』のデスマスクのせいで蟹座のイメージを悪くしてしまった人間は少なくはないのではないか。その汚名を返上するときがきた。もちろん、『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』(手代木史織)のマニゴルドによって、その地位は随分と回復したには違いない。しかし、決してデスマスク自身の失墜をどうこうするものではなかった。それがまさか、デスマスク自身が本人と蟹座の名誉を挽回するような活躍を見せてくれる。『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』(岡田芽武)の7巻だ。

 当初は、円卓の騎士の伝説と『聖闘士星矢』の神話とをミックスすることで怒濤のスペクタクルを起こしていたマンガである。が、ここ数巻では、後者の要素が前者の要素を上回っていくなかに驚愕の展開を生じさせていた。本編の引用がふんだんになることは、外伝の在り方としては確かに正しい。と同時に、やり過ぎだよ、と思わされるところに、もっというなら、原作に対するリスペクトをキープしつつ、スピンアウトもしくは二次創作ならではのセンセーションが過剰となっているところに、間違いなく『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』のアピールが存在していることは、そう、前巻(6巻)における星矢の復活によって明らかであろう。

 再起不能に陥ったはずの本来の主人公、星矢の復活は、車田正美が手掛けている正統な続編の『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』でもいまだ果たされていない以上、ある種のタブーに近い。なぜなら『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』の聖闘士たちは、生きているとも死んでいるともつかない状態の聖矢を救うべく、新たなる聖戦を繰り広げている最中なのである。作品そのものや時代の設定が違うとはいえ、それを本家よりも先にやられては読んでいる方が困ってしまう。結局のところ、聖矢の不在とは、本編完結後の作中の時間軸における最も重要なキーであって、この点は『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』も『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』も同様なのだ。

 しかして『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』は、物語の舞台を時空の狂った世界、それこそ円卓の騎士が現代へと蘇ってくるほどに時空の狂った世界であることの必然として星矢の復活を可能にしている。なぜなのかの具体的な説明がないまま、先代の黄金聖闘士と黄金聖闘士になった紫龍たちの世代とが時間を越えて共闘しうる世界であるならば、何が起きても不思議ではあるまい、という成り立ちをしているのだ。たとえば、ソーシャル・ゲームでは、伝説の英雄や歴史上の偉人がガチャのユニットとして肩を並べることに違和感がない。以前にも述べた通り、そうしたソーシャル・ゲームのシステムと親和であるような発想が『聖闘士星矢 EPISODE.G アサシン』の説得力を支えているのだと思う。

 何が起こっても不思議ではあるまい。しかし、ここにきて、またサプライズな登場人物がどんどんと出てくるかよ。一応はサプライズなので、新規に参入してきた他の登場人物の名前は伏せておくけれど、そのうちの一人が、先に挙げたデスマスクにほかならない。

 ああ、残酷なる蟹座の黄金聖闘士よ。その本質にアレンジは加えていないながら、新しい角度から矜持とでもすべき部分を掘り出すことで、デスマスクのイメージをアップデートするに至っている。いや、前身にあたる『EPISODE.G』の段階で既にデスマスクは存在していたが、ここでは悪質な彼をよく知る氷河との対峙を通じ、単なるヒールのそれにとどまらない表情を覗かせているのだ。そんなのデスマスクじゃねえよ、という否定ではなく、こんなデスマスクを見てみたかった、と頷かされるものがあるのは、つまり「もしも」の可能性を十分に再現しているためであろう。「もしも」の可能性を十分に再現することが、すぐれたスピンアウトあるいは二次創作にとって必要不可欠な条件だとしたら、それを満たしているのである。

 その「もしも」の可能性を十分に再現するような手つきは、デスマスクのみならず、あの黄金聖闘士にも本編とは一線を画した表情をもたらしていく。シュラをして〈あれは… 俺が… 討てなければ成っていた男だ〉と「もしも」の可能性を示唆された対立教皇、そして、混沌女神(カオスアテナ)の降臨は、以前にも増して驚愕の展開を予感させる。

 3巻について→こちら
 1巻について→こちら

 『聖闘士星矢 EPISODE.G』
  20巻について→こちら
 17巻について→こちら
  15巻について→こちら
  0巻について→こちら 
  14巻について→こちら
  11巻について→こちら
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
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