ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年05月01日
 10TH ANNIVERSARY BEST “10Ksテンクス! 10TH ANNIVERSARY BEST “10Ksテンクス! 10TH ANNIVERSARY BEST “10Ksテンクス!

 誰にとっても思い入れのある対象は他に類を見ないものに違いないのだったが、ことKAT-TUNに関しては、一般的な認識のレベルにいおいても他に類を見ないキャリアを辿ってきたのではないか。波乱に満ちたディケイドであったと思う。結成からしばらくの期間があったとはいえ、デビューの直後にスターダムへと躍り出、破格の成功を収めたにもかかわらず、キャリアを更新する度にトラジックなイメージを背負っていき、まるで生き急ぐかのようにライズ・アンド・フォールの両義性を引き受け続けた。非常に濃い10年間にほかならない。だが、デビューから10周年を節目に活動休止に入るという。

 4月30日、その活動の一時的なピリオドでもある「KAT-TUN 10TH ANNIVERSARY LIVE TOUR“10Ks!”」を東京ドームで観た。実は前日(4月29日)も同会場に足を運んだのだけれど、30日、最後の長いスピーチで――今回のスピーチはこれまでのコンサートではなかったぐらい長いものだった――亀梨和也が、赤西仁、田口淳之介、田中聖の名前を挙げ、すべてのはじまりがあくまでも6人であったことを強調したとき、会場全体がすすり泣くかのような雰囲気になった。実際、自分はぼろぼろ泣いてしまった。実名こそ挙げなかったものの、上田竜也のスピーチも同様の趣旨を含んでいたのではないかと思う。それはおそらく、KAT-TUNというグループが、そして、彼らのファンが失ってきたものの大きさをあらためて知らしめていたのである。しかし、悲しみのためだけに泣けたのではない。メンバーの脱退による埋めがたい欠落を生じさせながらも、決して崩壊をせず、こらえ、その都度、グループと方向性とを再構築してきた踏ん張りのなかに確かなドラマがあったことを、ヒロイックなまでのストーリーが異例の魅力となっていたことを同時に思い出させるがゆえに、ああ、胸の奥深いところで、じーん、とさせられたのだった。

 ベスト・アルバムである『KAT-TUN 10TH ANNIVERSARY BEST“10Ks!”』のリリースに伴ったコンサートだということもあって、正しくグレイテスト・ヒッツと呼ぶに相応しいセット・リストが披露された。シングルではないが、デビューの以前からアンセムとして歌われてきた「GOLD」で幕を開け、デビュー・シングルにしてミリオン・セラーを叩き出した「Real Face」が続く。以降も代名詞のごとくKAT-TUNのキャリアを彩ったナンバーがずらりと並ぶ。MCでも述べられていた通り、今回のコンサートは、バックにダンサーもバンドの演奏も付けず、亀梨、上田、中丸雄一の3人で歌って踊るという極めてシンプルなものである。ステージ上のギミックにせよ、パイロや噴水などの演出は健在だったけれど、必ずしもド派手なものではなかった。過去の公演からすれば、地味な部類に入るであろう。それがかえってファンとの距離感を縮めていたところがある。3人のパフォーマンスとファンの声援とでショーが作られていくという印象が何よりも強く現れていたのである。2014年並びに2015年のコンサートでは、田口を含めた4人での可能性とバランスとを模索するかのようなギミックも多々見られたが、今回はキャリアの総括に3人が剥き身で向き合っていた。そこに真摯で訴えかけてくるものがあったのだ。

 それにしても名曲と判断して差し支えのないナンバーの多いグループである。激しいハード・ロックからエレクトリックなダンス・チューン、静かなヴォーカルのユニゾンが美しいバラードまで、ヴァリエーションは異なれど、どの楽曲もKAT-TUNという記名性を紛れもなく宿していたことを再確認させられる。かつては田中のサグいラップが、赤西のパワフルな声量が、田口のクセがある声質が、その記名性をフォローしていたことも少なくはなかった。だが、それらを失ってもなお、亀梨のエモーショナルな叫びが、中丸のヒューマン・ビート・ボックスのスキルが、上田のナイーヴさとワイルドさの掛け合わさったヴォーカルとが、KAT-TUNの記名性のコアを損なわせず、守ってきた。傷の有無でいえば、傷はある。しかし、傷一つないわけではないことが、そう、このグループをいつだって次のフェイズへと進ませてきたのである。

 10年に渡るキャリアの後半にあってさえ、代表曲となるようなナンバーが数多く生まれた。そのことは、今回のセット・リストにも如実であった。ファンにとっては馴染みの深い初期の楽曲が盛り上がるのは当然だが、ここ数年――5人が4人になってから――発表された楽曲の盛り上がりは、それらに劣ったりはしない。せつないメロディとデジタルの躍動を一杯に溢れさせた「In Fact」のインパクトは、やはり、鮮烈であるし、アレンジとコーラスとがKinki Kidsの「雨のメロディ」を彷彿とさせる「KISS KISS KISS」は、Kinki Kidsのバック・ダンサーであった自分たちの原点に正直な楽曲であろう。スケールの壮大なアレンジとミニマリズムのリリックとが同居し、近未来のエピック(叙事詩)をイメージさせる「RAY」は、シングルのカップリングであったにもかかわらず、2015年のコンサートのときと同様、圧倒的なクライマックスを描き上げる。

 ところで、セット・リストに加えられた初期の楽曲について特筆すべき点がある。「Will Be All Right」の存在だ。6人だった頃のメンバーが全員で作詞にあたり、当時のアンセムに数えられる。反面、その成り立ちのせいか。赤西が脱退してからほとんど歌われることはなかった。それがまさか、フルに等しいヴァージョンで歌われるなんて。6人の時代、5人の時代、4人の時代といった区切りを飛び越え、デビューより10年を数えてきたKAT-TUNという単位をベースに「KAT-TUN 10TH ANNIVERSARY LIVE TOUR“10Ks!”」が開かれていることをうかがわせる。最後のコーラスをファンに委ねることで、会場にいた皆の声が、文字通り、一つになった場面は、この日のハイライトだろう。ああ、遠くなってしまった日に発せられた〈What You Worry About Will Be All Right〉というメッセージが現在に届き、また未来に向け、高らかに発せられていく。曲調は違えど、アンコールの際、上田のピアノと中丸のヒューマン・ビート・ボックスをバックにし、亀梨のヴォーカルではじまったバラード、「PRECIOUS ONE」にも「Will Be All Right」に近い役割が課せられていたように思う。

 本編のラストに置かれることとなったのは、『KAT-TUN 10TH ANNIVERSARY BEST“10Ks!”』に収められた新曲の「君のユメ ぼくのユメ」である。スガシカオがソング・ライティングを手掛け、「Real Face」の歌詞の引用を途中に挟んだバラードは、ずるいほど感動的な場面を連れてくるのだった。亀梨、上田、中丸の3人がマイクをリレーしながら〈"行こう!一緒なら跳べるぜ" どこまでも〉と呼びかける。あたかもそれは、今までに果たされてきた誓いを称えているようでもあり、これからの約束に結びついた祈りのようでもある。

 現段階ではリリースされていない「BRAND NEW STAGE」が、アンコールにおけるラスト・ナンバー、つまりは全編の最後を飾ったことは、何かしら象徴的でもあった。それが活動休止にあたってのエピローグを意味するのか。活動再開のためのプロローグを意味するのか。今はまだわからない。いずれにせよ、5月1日のコンサートを経、デビュー以来、波乱と並走し続けてきたKAT-TUNのキャリアは、しばしの休息を迎える。

・その他KAT-TUNに関する文章
 「In Fact」について→こちら
 『楔-kusabi-』について→こちら
 「FACE to Face」について→こちら
 「WHITE」について→こちら
 「CHANGE UR WORLD」について→こちら
 『NO MORE PAIИ』について→こちら
 「Going!」について→こちら
 「Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜」について→こちら
 『Break the Records -by you & for you-』について→こちら
 「RESCUE」について→こちら
 「ONE DROP」について→こちら
 「White X'mas」について→こちら
 『KAT-TUN III - QUEEN OF PIRATES』について→こちら
 「DON’T U EVER STOP」について→こちら
 「LIPS」について→こちら
 「喜びの歌」について→こちら
 『Cartoon KAT-TUN II You』について→こちら
 『Live of KAT-TUN “Real Face”』DVDについて→こちら
 「REAL FACE」について→こちら

 DVD『KAT-TUN LIVE Break the Records』について→こちら
 DVD『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』について→こちら

 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2012 CHAIN』(2012年4月20日・東京ドーム)について→こちら
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 PART2:WORLD BIG TOUR』(2010年・東京ドーム)
  7月24日の公演について→こちら
  7月17日の公演について→こちら
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 公開リハーサル』(4月28日・さいたまスーパーアリーナ)について→こちら
 コンサート『不滅の10日間ライブ KAT-TUN TOKYO DOME 2009』(09年・東京ドーム)
  6月15日の公演について→こちら
  5月22日の公演について→こちら
  5月18日の公演について→こちら 
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』(08年8月5日・東京ドーム)について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2016年)
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