ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年03月06日
 ものの歩 2 (ジャンプコミックス)

 現在、競技マンガの少なからずが、まるでその競技にトラウマの解消策を見出そうとしているかのような描き方をしてしまっている。おそらくは主人公やライヴァルの暗いプロフィールを掘り下げることで何かしらのドラマを生み出そうとする安易さと悪習のせいであろう。しかして、それは健全な精神は健全な肉体に宿る式の古い建前とどこがどう違うのか。既に方法論が一周したがゆえの不自由さに退屈を覚えるときがある。スポーツ・マンガに限定した話ではない。将棋を題材にした池沢春人の『ものの歩』も同様にトラウマの解消策を物語の内側に抱え込んでいるのだ。ほとんど偶然に将棋と出会い、プロの棋士を目指しはじめた主人公、高良信歩のモチベーションは、漏れなくトラウマとワンセットになっているし、この2巻で信歩と対局を繰り広げている天才ゲーマー、相楽十歩にしても心に傷を負った過去を免れてはいない。と、批判的な旨を述べている風だが、そうではない。にもかかわらず、熱くなるものを感じられるのはなぜか。それを重要視したいのであって、やはり、男子三日会わざれば刮目して見よ、というテーゼこそが少年マンガにとっての大きな魅力にほかならないことを思い出させてくれるのだ。信歩は、天才というよりは努力型の人間である。たゆまぬ努力が無駄に終わることなく、見事な成果へと結びついていく。そこでしか得られないカタルシスと一致しており、個性の面でいえば、とりたててチャーミングな主人公ではないかもしれないけれど、凡庸さのなかに隠された可能性が芽吹き、花開く瞬間を体現している。
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