ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年03月04日
 ReReハロ 9 (マーガレットコミックス)

 階級の異なった男女が、恋愛のマジックを通じ、身分の差を飛び越えていく。これは少女マンガにおいて古くから継承されてきた(一億総中流が語られた年代にあってさえ有効であったし、格差社会が叫ばれる現在なお有効な)ファンタジー、様式、形式美であろう。必ずしも生活が豊かではない女子高生と裕福なエリートの坊ちゃんのロマンスを描いた南塔子の『ReReハロ』も、どれだけ作者が意識しているのかは不明だが、その様式が下敷きになっているといえる。

 ヒロインであるリリコは、父親が営む便利屋の手伝いをきっかけに、広いマンションで一人暮らしをしている他の学校の男子、湊と知り合い、次第に両想いの関係へと進むのであった。いくつもの障害を経、晴れて恋人同士となった二人の、足並みは寄り添うほどに確かだが、それでも性急に事を運ぶことのないテンポが、ここ数巻の魅力だと思う。周囲の人間との関係を含め、前向きに一歩一歩が刻まれることの心地良さが現れているのだ。そして、形式美の必然ではあるのだけれど、きた、というべきか。なぜ湊が家族との折り合いが悪く、一人暮らしをしているのか。初期の段階から暗示されていた重要な案件が、この9巻では展開させられているのである。

 エピソードそれ自体は、やはり、様式として見られるものであって、目新しさを覚えることはない。だが、常にクールであるような湊の孤独と救済をいかに描くか。果たしてリリコのポジティヴなテンションが湊に何をもたらしているのか――リリコのポジティヴなテンションこそが湊にとっての救済であるがゆえに他の誰でもない彼女を選んだのだということ――を、本来は暗いお話であるはずなのに、その暗さの方には引っ張られてはいかない力強さで、きっちりプレゼンテーションできている。そこに『ReReハロ』というマンガの優れている点が同居しているのだ。

 リリコの弟が捨て猫を拾ってくるエピソードには、弟を中心としたサイド・ストーリーのようでありながら、湊とリリコのお互いに信頼しきった姿がよく出ている。カップルがただいちゃついているだけのシーンにさえ、作品を好印象にさせるような輝きが備わっている。

 1巻について→こちら
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