ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年01月14日
 恋について話そうか 2 (フラワーコミックス)

 たとえば、と思う。永遠に続くものなどはないのだとしても、この気持ちがずっと変わらずにあって欲しいと願うときがある。ともすると、藤原よしこのマンガはどれも、そのような願いの、ささやかであるはずなのに、かけがえのないことを綴っているのである。ヒロインの年齢を、以前の作品に比べて、いくらか上の大学生に設定した『恋について話そうか』についても、それは同様であろう。

 立場やイメージ、性格にギャップがある男女のロマンスは、この作者の得意とするところであって、ヒロインである野々村昴とカップルになる桐谷瑠衣の兄との関係には、『だから恋と呼ばないで』等の過去の作品を参照させる部分がある。しかし、お約束である以上に色褪せない魅力を感じさせるのは、若い登場人物たちに訪れる最初の経験と新鮮な感動とを、派手にデコレイトすることなく、むしろ素朴であるほどに切実さの際立っていくような手つきで導き出しているからである。現代的なセンセーションに乏しいかわり、若い登場人物たちの(若いがゆえに)つたないやりとりには、エヴェーグリーンと喩えるのに相応しい適温が備わっているのだ。

 教育学部の美術科に通う昴は、母親の再婚を機に一人暮らしをはじめたのはいいのだけれど、期待と違ったのは、アパートの隣に住んでいるのが、少しばかり意地の悪そうな男性であることだ。しかも、彼は同じ大学の法学部だという。他方、端麗な容姿と優秀な成績から大学でも目立つことの多い瑠衣は、アパートの隣に引っ越してきた昴の、そのおっちょこちょいだが、お人好しな性格に、どうしてか興味を引かれてしまう。からかっているつもりで昴に接していた瑠衣、そして、敬遠しているつもりなのに瑠衣と身近になっていく昴、お互いとも意図せずに恋愛の入口へと足を踏み入れていたのだった。

 昴と瑠衣の恋愛は、大学生だが、まるで中高生のような初々しさを強調している。今どきの子はもうちょっとすれているんじゃない式のリアリズムで鼻にかけない向きもあるだろう。だが、ピュアと換言できるレベルの初々しさが、それまで恋愛を知らないできた二人の最初の経験と新鮮な感動とに、確かな輪郭を与えている点を看過してはならない。全2巻の長さが作者の構想によるものか人気の結果によるものかは不明である。しかし、終わりや別れではなく、あくまでもはじまりを描くことに撤した『恋について話そうか』には、このときの気持ちがずっと変わらないでいて欲しいという願いの、透き通るぐらいに濁りのない趣が、よく出ている。

・その他藤原よしこに関する文章
 『だから恋とよばないで』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『恋したがりのブルー』
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら 
  1巻について→こちら
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