ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2015年12月14日
 百足 1 (少年チャンピオン・コミックス)

 そう。これだ。男の子なら、こういうマンガが読みたかった、と思わされる。フクイタクミの『百足 ムカデ』の1巻である。主人公である好漢が、恩義のある姉弟を救うため、100人からなる悪党の集団をばったばったと打ち倒す。プロットを述べるのであれば、本当にそれだけのお話にすぎない。しかし、どうだ。まるで長期連載を視野に入れていないかのようなワン・アイディアの徹底が、怒濤と喩えるのに相応しいスピードの展開を作品に呼び込んでいる。いや、展開らしき展開は(今のところ)一難去ってまた一難、危機に次ぐ危機の訪れのみ、であろう。だが、それが間髪を容れず、巻き起こることに大きな興奮がある。

 もちろん、主人公や彼が打ち倒してく悪党どもに充分な魅力が備わっていなくては活劇そのものの魅力も損なわれてしまうに違いない。この点も短い場面のなかに的確なプレゼンテーションを盛り込むことで見事にクリアーしている。「百手無双流」という武術の使い手として描かれる主人公の馬頭丸は、とにかく強い。そして、100人が100人、個性的なスタイルで殺戮を弄ぶ「百足」の面子は、とにかくやばい。ネーミングからして対になっているのは明らかだけれど、その二つの相反するエネルギーが、くどい回り道を経ることなしに正面からぶつかり合っていく。さらに注目されたいのは、半日も過ぎていないわずかばかりのあいだに瞬間風速的なバトルが次々と繰り返されていることであろう。

 最初から強い者同士が、何の修行もなく、何の休息もなく、何の逡巡もなく、ただただ相手を組み伏せることに終始する。一方、馬頭丸を待ちわびながらも逃げ惑うお泉と田彦の姉弟には、容赦のないピンチが絶えずにもたらされる。この二面の密接な連動が時間の進行(押し寄せるタイムリミット)を代替しているところに、肝を冷やすかのようなサスペンスが生じている。必殺技の応酬だけを見るのであれば、古いタイプの少年マンガにも思える。だが、作品の構成は、現代的な少年マンガの文法に近く、練られている。ルールや根拠のないバトルを満載にしている風でありつつ、特定の条件がスリルを左右するというデス・ゲームの印象をも表に出してきているのである。

 とはいえ、純粋な正義と純粋な悪しか存在しない勢力図に、難解さはまったくない。どちらがどちらを屈するのか。勝敗の行方は、すごい勢いで上がり下がりするシーソーの簡単なアトラクションがなぜか子供心をわくわくさせるのに似た訴求力を放つ。
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