ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2015年10月05日
 HONK MACHINE

 ニッケ・アンダーソンのキャリアを振り返るとき、哀愁を帯びた黄昏のロックン・ロールは、THE HELLACOPTERSの中期の頃よりの規定の路線である。ソロ・プロジェクトに近い形でスタートし、現在はバンドとしてのラインナップが完成されたIMPERIAL STATE ELECTRICでも、それは徹底されてきたといえる。確かにENTORMBED在籍時や初期のTHE HELLACOPTERSのイメージが強い層にしたらエキサイティングしづらい方向性であるかもしれないし、正直な話、自分にもそのように受け止めてしまう部分があるにはある。が、しかし、フォームが完全に決まっていることのかっこよさを見せつけられたら文句の一つも出てこないんだからな、と説得されるような迷いのなさ、それが導いてくるようなシンプルでいて入魂の極まったサウンドにこそ、最大の魅力があるのは間違いがないのだった。

 ああ、そして、IMPERIAL STATE ELECTRICの魅力を過不足なく堪能できるのが、通算4枚目のフル・アルバムとなる『HONK MACHINE』であろう。これまで以上に楽曲のヴァリエーションを増やしながら、にもかかわらず焦点のしっかりと定まった内容は、ある種のピークを思わせる。いや、後期のTHE HELLACOPTERSまでをも含めた上でベストといって差し支えがないものだ。随所に古典と呼ぶに相応しいナンバーやアーティストの引用を絡めつつ、心地好いテンポのロックン・ロールを次々に繰り出していき、LPのアナログ・レコード(ヴァイナル盤)になぞらえた構成が、スタンダードやオーソドックスという修辞を正しくたぐり寄せているのは、いつも通りに貫かれたマナーである。

 自分たちでこうと決めたフォームを崩すことなく、一見すると手癖のような気負いのなさだけれど、しかし、職人芸と呼ぶのに相応しいキャッチーな響きのリフとコーラスとが、2〜3分台の楽曲の数々には満載されている。バックの演奏は、ハードにドライヴすると同時にしなやかでいて、パセティックなメロディが、まるでさっき覚えたばかりであるかのようなフィーリングの瑞々しさに繋げられているのである。ギターのトビアス・エッジやTHE DUTSUNSの中心人物でもあるベースのドルフ・デ・ボーストが、楽曲によってはメインでヴォーカルを張るなど、ニッケのみならず、他のメンバーの活躍も著しい。ヴォーカルの声質が異なろうと、まったく違和感はない。すべてがIMPERIAL STATE ELECTRICというブランドに一致してしまうのは、フォームが完全に決まっていることのかっこよさの証明だろう。

 6曲目の「WALK ON BY」は、異色のナンバーであるかもしれない。ニッケがSONIC'S RENDEZVOUS BANDのスコット・モーガンと組んでいたTHE SOLUTIONを彷彿とさせる。女性のヴォーカルが入ってくるリズム・アンド・ブルーズ、ソウル・ミュージックのアプローチである。それがごく当たり前に馴染んでいる。フォームが完全に決まっているということを不自由だとはしない。フォームそのものの柔軟さが、幅の広い参照と引用とを実現しているのだ。IMPERIAL STATE ELECTRICならではのメロウな疾走を醍醐味とした7曲目の「ANOTHER ARMAGEDON」は、もちろん、素晴らしい。「ANOTHER ARMAGEDON」をはじめ、出だしの部分で掴みの強いナンバーが以前にも増して充実していて、先に述べた通り、バンドの歩みにとってある種のピークを思わせる。会心の一作となっている。

 『POP WAR』について→こちら

バンドのオフィシャル・サイト→こちら

・THE HELLACOPTERSに関する文章
 『HEAD OFF』について→こちら
 『AIR RAID SERENADES』について→こちら
 『ROCK & ROLL IS DEAD』について→こちら
 『STRIKES LIKE LIGHTNING』について→こちら 
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2015年)
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