ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2015年10月02日
 またあした 2 (りぼんマスコットコミックス)

 前作の『流れ星レンズ』に比べ、いくらかハジけた少女や少年を登場人物にしているけれど、それでも純粋な気持ちは他の誰かに必ずや影響を与えるのだ、他の誰かから純粋な気持ちを与えられることで自分が変わることもあるのだ、という点が強調的になっているあたり、ああ、村田真優だと思わされる。『またあした』である。

 明るく楽しい性格で、女友達には恵まれているが、男子との付き合いはとんと苦手なヒロイン、椛永遠(もみじとわ)であった。が、高校へ進学し、周囲に不良として見られている男子、豹藤望や、周囲に優等生として一目置かれている男子、孔雀優と知り合い、関わり、興味を持っていくうち、自分でも気づかぬまま、恋愛というものに接近していくこととなる。以上が1巻からの大まかなあらすじであって、基本的にはウブなヒロインと二人の王子様による三角関係を土台にした(定型に添った)作品だといえる。

 不良のようだが、実は心優しい豹藤と、優等生を装ってはいるが、実は性根の悪い孔雀のコントラストは、三角関係をベースにしたラヴ・ロマンスに、はっきりとした輪郭を与えている。フックであろう。異性の立場においては、永遠だけが彼らの素顔を知っていること、それが導入の部分となっていて、自分の素顔を見せられる異性は他にはいないことの大切さをめぐり、ストーリーは展開するのである。もちろん、一人の少女がそれまで無縁であった恋愛の感情を知り、戸惑い、悩むこと、ここに思春期のときめきと成長のテーマを見て取ることができる。

 友達から恋人に。友情から恋愛に。永遠が踏むステップは、それが異性からの押しの強いアプローチによるものであれ、意外と早い。そして、知り、戸惑い、悩むのは、好きになった相手の気持ちが果たして自分の気持ちと同様なのか否かを疑問符なしでは考えられないことのもどかしさについてだ。そう、であるがゆえに〈恋って面倒なんだな 相手が何考えてるか分かんなくて 怖くて 振りまわされるのは 好きになった方 人の気も 知らないで〉と思うのだし、相手の気持ちを確かめずにはいられなくなるのであった。

 ストーリーの表面で判断するのであれば、この2巻で、永遠の気持ちがはっきり豹藤に向かっていることが示されているため、三角関係そのものは非常にアンバランスなものとなっている。孔雀と豹藤のあいだで揺れ動く永遠という構図は採用されていない(ように一見すると思える)のである。しかし、注意されたいのは、永遠の意識のなかでは〈優ちゃん(孔雀)には 言わなくても分かるのに でものんちゃん(豹藤)には 言わなきゃ分かんない〉とされるような区分が生じている点であろう。

 先に述べた通り、相手の気持ちを確かめずにはいられないことが永遠にとっての恋愛のトリガーとなっている。それは永遠と豹藤の結びつきを問うものである。他方、俯瞰するのであれば、自分のことを本当に理解しているのはどちらの異性かという問いが、孔雀の介入には託されている。いずれにせよ、ヒロインの前には、たとえ当人が気づいていなかろうと、二つの選択肢、二つの可能性が置かれていることに変わりはないのだ。

 驚くべきことに、永遠をあいだにしながらも、豹藤と孔雀の直接の衝突は、ここまでほとんど描かれていない。それは一人の少女に、いかなる選択肢をもたらされているか、いかなる可能性が開かれているか、を軸にし、作品が編まれている(編まれていた)からなのだと思われる。だが、2巻のラストは明らかな波乱を予感させる。豹藤と孔雀の直接の衝突はあるのか。予感は同時に、どのような選択肢も可能性も、いつしか一つに絞られなければならないことを、うかがわせている。
 
・その他村田真優に関する文章
 『イン ザ チョコレート』について→こちら
 『妄想シンデレラ』について→こちら
 『ドクロ×ハート』について→こちら
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