ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2015年07月17日
 L DK(18) (講談社コミックス別冊フレンド)

 渡辺あゆの『L・DK』には、確かにこれまでにもメインのカップル以外の登場人物に照明をあてたエピソードがなかったわけではない。が、ここ数巻、とりわけこの18巻における久我山玲苑の描かれ方は、それらと少々異なっていると感じられる。

 玲苑は、ヒロインである葵の恋人、柊聖をアメリカへ連れて帰るためにやってきた従兄弟であって、目的の妨げになる葵を当初は毛嫌いしていた。しかし、葵と再三ぶつかり合ううち、玲苑の気持ちに変化が生じはじめる。それが恋愛感情であることを玲苑は認めたくはないのだけれど、否応なく惹かれていき、次第に葵と柊聖のあいだに割って入るようになるのだった。要するに、少女マンガのロマンスに不可欠な噛ませ犬(当て馬)のポジションを与えられている。

 ただし、『L・DK』に関しては、既に別の登場人物を噛ませ犬にし、三角関係のエピソードを展開していたという過去があるし、三角関係のエピソードそれ自体、シチュエーションを変えつつ、繰り返されてはいた。必ずしも新しいパターンを持ってきているのではない。だが、以前のパターンが、あくまでもヒロインである葵の心の揺らぎを中心にしたものであったとしたら、今回、本来はリリーフであるはずの玲苑の心の揺らぎに寄り添うようにし、エピソードを描いているところがある。

 換言すれば、メインであるカップルの存在を一旦ワキにずらしておいて、かわりに噛ませ犬のような立場から同居型のロマンス、ラブコメという『L・DK』のコンセプトを再編しているのである。

 少なくとも今巻に限って見れば、主人公は玲苑だとさえいえる。多くの読み手が、玲苑が出てきた段階で、現在の展開は読めていた、のではないだろうか。筋書きには驚きがないのだけれど、従兄弟の恋人に惹かれることのジレンマ、しかし、その従兄弟の恋人の目には恋愛の対象として入っていないことのジレンマ、それらをデリケートに掘り下げるような手つきが、18巻の長さの作品を再びフレッシュにしているのだ。

 まあ、玲苑が何をどうしようと、葵と柊聖の繋がりは盤石でしょうね、と思わざるをえない。この意味で本編を左右するほどの緊張は作られていないのだが、玲苑の独り相撲であるような状況には、片想いを承知しているにもかかわらず、誰かを好きになってしまった際の(当人には完全に制御しきれない。それでいて普遍的でもある)衝動が、実によく反映されている。

 13巻について→こちら
 10巻について→こちら
 5巻について→こちら
 4巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら 

・その他渡辺あゆに関する文章
 『オトメゴコロ』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『キミがスキ』
  2巻について→こちら
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック