ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年06月07日
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 あ、これ、ぐっときた。涙腺と、あと身体の奥のどこだろう、たぶんガッツが湧いてくるあたりに、ぐっとくる。海外の有名な山々を渡り歩いたクライマー島崎三歩は現在、日本アルプスで民間の救助ボランティアをやっている。登山客が遭難すれば、長野県警に勤務する幼なじみの野田から連絡が入るのだ。すばらしい眺めと隣り合わせの危険、登山に魅せられた人々の姿が、てらいのない真っ直ぐさでもって描かれている。このマンガの良いところは、命の重みと軽さが等間隔で捉まえられている点だと思う。たとえば次のような場面。三歩のかつての同僚たちが海外から訪ねてくる。彼らもまた山岳でのレスキューを生業としている。三歩が近況を尋ねると〈助かる人間がいて 助からない人間がいる。日本だって同じだろ?〉という返事が返ってくる。すると三歩は答える。〈ああ、同じだよ〉。ここらへんのやり取りに暗い影は落とされていない。淡々としていて、それはつまり、無常の域で交わされている会話なのだということが、こちらに伝わる。三歩が救助に駆けつければ、すべての人間が助かるという、ご都合主義的展開も排除されている。雪崩に呑み込まれた人命が発見されることもなければ、崖から落下し頭蓋をやられてしまった人間の息はあっけなく止まる。しかし、三歩は過剰に悲しんだりしない。むしろ笑顔を崩さない。新任の婦警がそれを見て言う。〈三歩さん、海外でも人の死をたくさん見て…感覚がマヒしちゃってるのかも……〉。でも、そうじゃない。生きているときには生きてることの喜びを、そのことを忘れまいとする仕草なのだ、と読みながら気づく。絵柄は、掲載誌が『ビッグコミックオリジナル』だということもあり、じつに青年誌的なもので、キャッチーとは言い難いけれども、その部分もまたストーリーとうまい具合にマッチしている。P172の見せ場なんかは、びしっと決まっていて、とても気分が良い。かなりぐっとくる。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ。
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