ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年05月04日
 蒼太の包丁(14)

 基本的に、一話完結に近い形式でありながら、その連続のなかで、ちゃんと作中の物語というか時間が動きつつ、これだけのクオリティを未だに保っているのがえらい。現在連載されている料理マンガのうちで、最上のものは、たぶんこれではないのかな。『蒼太の包丁』の14巻である。この巻の、もっとも大きなトピックは、蒼太が助っ人に行っていた先の料理人である雅美が、『富み久』に移籍してくることになり、入れ替わりで、花ノ井が京都に戻るあたりだろう。でもって、そのくだり以前に置かれている、蒼太の、煮方に昇格するエピソードにおいて、花ノ井がみせる熱さが、また堪らなく、のちにやって来る彼の去り際を、よりいっそう引き立てる。煮方になるための課題をクリアしたはいいが、どうもすっきりとしない結果に、戸惑い、悩む蒼太に向かって、花ノ井は〈やすやすと「コツ」とか言うなやっ!〉と激しく叱責する。〈アンチョコみたいなやり方で「はい、この通り」って出来るんやったら修行いらんやんけ!〉というわけだから、である。ここで蒼太に突き付けられているのは、料理マンガの根幹ともいえる、つまりディシプリンの問題に他ならない。教わること、学ぶことは、誰かの力を頼りに、できる。しかし、そこから先は、自力で、覚えたことを、忘れず、身につけ、キープし続けなければならないのであって、それに耐えることこそが、じつは厳しい。このことは、蒼太の弟弟子である須貝が、雅美の加入によって、自分の立場に不安を覚えるべつのエピソードにも、反映されており、須貝の成長を見守る蒼太の〈才能がなければ認められない / しかし才能だけでは上がれない / それは僕たちすべての料理人に課せられた試練なんだ〉という、締めのモノローグへ、集約される。むろん、何もそれは料理人に限ったことではないから、読み手を説得する内容となるのである。ところで、マンガの見せ方としても、同じ場面を、コピーではなくて、(たぶん)模写で2コマ展開させる手法は、いつから使われていたのか気が付かなかったが、なかなかに気が利いている。

 13巻について→こちら
 12巻について→こちら
 11巻について→こちら
 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
 7巻について→こちら
 6巻について→こちら 
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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