ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2014年10月20日
 [R-16]R(1) (ヤンマガKCスペシャル)

 ああ、禁断の物語の幕があがる。佐木飛朗斗(原作)と東直輝(漫画)の『[R-16]R』の1巻である。どうして、禁断なのか。それは、幸福とはいいがたい結末を迎えた『[R-16]』の登場人物たちのその後を、間接的にであろうと知ることになるからだった。つまり、鳴海純弥は、門倉真希央は、テル(安斉輝男)は、狂いの生じた運命の歯車を正しくできるだけの“強い生き物”になれたかよ、であろう。もちろん、小説として発表された「秋の16歳」は、一つの回答ではあった。しかし、同時に歯車の軋みをそのままにした残響のようでもあった。失われてしまったものは永遠に取り返せないことを『[R-16]』の少年たちは知ることになるのである。そして、『[R-16]R』は、『[R-16]』の少年たちでさえも既に失われてしまった世界を舞台にしている。

 主人公は鳴海純弥の息子、鳴海純真だ。純真を中心とし、『[R-16]』の少年たちの子供の世代が『[R-16]R』では描かれていくのだったが、ここで注意されたいのは、世代を交代してもなお、『[R-16]』における運命の歯車の回転が『[R-16]R』で繰り返されている点である。輪廻、因果、ループ、どのように喩えてもいい。純真は、純弥の息子であると同時に純弥の運命をもリヴァイヴァルしているのである。いや、純真に限ったことではない。純真の親友たち、リョウ(門倉稜一郎)とマコ(二階堂麻琴)も『[R-16]』の繰り返しを彼ら自身の中に内蔵している。とりわけ、紅い髪と灰色の瞳を持ったリョウは、その門倉性が示している通り、真希央の血縁にほかならない。実は、マコも『[R-16]』のとある登場人物の血筋にあたる。さらに、純真たち三人の前に立ちはだかる少年、島田の混濁した意識と常軌を逸した暴力は、猪瀬英樹を彷彿とさせる。島田とは、猪瀬の子供を産んだ少女の名字であった。まるで示し合わせたかのように、親の世代に複雑な葛藤を持った少年たちが相まみえ、『[R-16]』の相関図を再現しはじめようとしているというのが、この1巻のあらすじとなる。

 もしも『[R-16]R』が『[R-16]』の相関図をなぞらえているのだとすれば、この段階では親友として笑顔を交わしている純真とリョウに決別が訪れるのかどうかが、大きな関心となってくる。『[R-16]R』の1巻は、純真が15歳のとき、まだ中学の頃(中学の卒業式の一日)を描いている。『[R-16]』でいうなら、「冬の15歳」である。「冬の15歳」に何があったかよ。高校進学を前にして、運命の歯車が次第にひずんでいったのではないか。その予兆は、『[R-16]R』において、島田の登場とリョウの敗北に感じられる。そして、日章カラーのカワサキ750RS、Z II(ゼッツー)だ。横浜神音天道會爆麗党の総長、南雲から純弥が譲り受けた特別仕様の単車は、『[R-16]R』でも『[R-16]』と変わらず、少年たちの欠落と欲望とを象徴するかのような役割を果たしているのだった。

 テーマのレベルで見るとすれば、『[R-16]』と『[R-16]R』の相似は、父親(父権)の不在(喪失)がもたらした少年たちの混乱に由来している。それは形骸化した家父長制といかに少年たちが闘うかということでもある。『[R-16]』の真希央の父親は父親である以上に巨大な資本家として真希央を支配することで、真希央から憎悪された。これに近い図式が、どうやらリョウと父親のあいだには横たわっているようである。リョウの父親が真希央だとしたら、真希央は自分が憎んでいた人間と同じ人間になったのだろうか。純弥だったら、それで“強い生き物”になれたのかよ、真希央、と問い質すだろうね、である。では、純弥はどうなった。純真に父親としての在り方をきちんと示しえたのか。なんと『[R-16]R』は、純真が三歳のときに純弥が故人になったという衝撃の事実をもって、物語の幕をあげるのであった。

「目的を失くしても行為は残る」これは『[R-16]』のラストで南雲が純弥に告げた言葉である。

『[R-16]R』を読むと、『外天の夏』や『爆麗音』の原点は『[R-16]』だということがよくわかる。もちろん、それらに描かれてきた孤独と苦悩は『疾風伝説 特攻の拓』の天羽時貞における根なし草というモチーフを原型にしている。佐木の作品に出てくる少年たちの少なからずが、皆、根なし草に生まれついているという意味での兄弟なのである。根なし草であるがゆえに少年たちは一瞬、刹那の速度に居場所を求めようとする。そう仮定されるとき、『[R-16]R』で母親(母性)がどのように描かれているかも見逃せない部分になるのかもしれない。

 『[R-16]』(漫画・桑原真也)12巻について→こちら

・その他佐木飛朗斗・東直輝に関する文章
 『爆音伝説カブラギ』
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『妖変ニーベルングの指環』1巻について→こちら
 『外天の夏』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら

・その他佐木飛朗斗に関する文章
 『疾風伝説 特攻の拓 外伝 〜Early Day's〜』(漫画・所十三)
  1巻について→こちら
  2巻について→こちら
 『爆麗音』(漫画・山田秋太郎)
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら  
  1巻・2巻について→こちら
 『パッサカリア[Op.7]』について→こちら
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