ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2014年08月11日
 セブン☆スター(1) (ヤンマガKCスペシャル)

 このところ、ヤンキー・マンガのジャンルでは「7人」という数にシンクロニシティめいた一致が見られる。たとえば(今年完結したが)『サムライソルジャー』の当初のモチーフには『七人の侍』が存在していたはずだし、『SHONANセブン』では「7人」の選抜メンバーをめぐるトーナメントが繰り広げられ、そして『セブン☆スター』は「7人」のローカル・ヒーロー、守護者(ガーディアン)の物語となっているのだった。まあ『山田くんと7人の魔女』はちょっと違うかな、とは思う。が、しかし、これが偶々のことか、そうでないのかは知らない。某アイドル・グループのヒエラルキーに「神7」というのがあるけれど(意図的にであれ、無意識にであれ、同時代の産物として)それと呼応している可能性だってなきにしもあらず、であろう。もちろん、以上は余談である。本題とはほとんど関係がない。

 それにしても柳内大樹である。『ギャングキング』のビルドゥングス・ロマン=成長の物語はまだ完結を見ていないのだが、『軍艦少年』における再生の物語を経、どうやら『セブン☆スター』では不良少年というモラトリアムのピカレスク・ロマンに着手しようとしているのではないかと思わせる。

 2年前、築地に「セブン☆スター」と呼ばれる伝説が誕生した。ヤクザから自分たちが生まれ育った街を守るべく、未成年に蔓延していた脱法ハーブを撲滅するために〈当時の高校の番や暴走族の頭 ギャングのトップに愚連隊のリーターなどが奇跡的に集まり結成された一夜限りのチーム〉がそれである。現在、「セブン☆スター」の一員であった川谷卓三(タクボン)は20歳になったばかり。世界一のベーシストを目指しながら、母親が切り盛りする屋形船を手伝っている。しばらく街には平和が続いていたのだったが、2020年の東京オリンピック開催に乗じ、築地に巨大なカジノを建設しようとする不穏な動きがあった。フリーマン(自由人)を名乗り、日本人初のカジノ王を目論む松田友作は、築地の街と「セブン☆スター」の面々に何をもたらすのか。というのが、1巻のあらましとなっている。

 かつての不良少年たちと都市を一変させかねないプロジェクトの合流には『サムライソルジャー』の終盤に通じるものがある。もしくは上條淳士の『8』を彷彿させたりもするけれど、それ以上に『ギャングキング』におけるピンコと「ジャスティス」のモチーフが流れ込んできているのだろう。学校を出ても社会には出られない不良少年たちが、自分の将来と居場所とを見据えた上で、制度やシステムと格闘しなければならないのである。登場人物の名前が昔の俳優に由来していることは明らかで、なかには美船敏郎(三船敏郎のもじり)も出てくる。やはり原型は『七人の侍』か。

 また、寝たきりの父親が自宅療養しているタクボンの家庭環境など、実際の設定はかなりきつい。これは近年、作者が提起してきたリアリズムとしての「想像力」を汲んだものに違いない。しかし、タクボンのみならず、フリーマンを含め、登場人物たち大半のテンションが(現段階では)極めてアッパーであることが『セブン☆スター』の特徴といえる。柳内大樹のキャリアの、あるいは『ギャングキング』の初期の、あの健康優良不良少年たちが帰ってきたようでもある。おそらくはこのことが、『軍艦少年』におけるテーマ主義的な暗さとは異なった色合いを、ピカレスク・ロマンであるような高揚を『セブン☆スター』に与えているのだ。

 正直な話、『軍艦少年』の暗さは少しばかり厳しかった。ただし、それが『ギャングキング』の中盤以降、作者によって追求されてきたリアリズムとしての「想像力」を徹底したためであったことはよくわかる。『軍艦少年』を高く買っているのは小説家の深町秋生である。深町は『まんが秘宝 男のための青春まんがクロニクル』というムックで『軍艦少年』を取り上げ、この手のジャンルの〈不愉快なほどの脳天気さと軽薄さ〉や『ギャングキング』の〈体育会系な健全さ〉を否定しながらも『軍艦少年』を〈シンプルな「喪失と再生の物語」だが、そのどんづまりな状況から這い上がる姿は力強くて美しい〉と述べている。これもよくわかる。浮ついた気分やヘラヘラとした態度では覆いきれない痛みを通し、生きることの重みを描いていたことは確かだ。が、その息苦しさがコマのレベルで判断される語り口やストーリーのテンポを、いくらかぎこちないものとしていた感は否めない。

 対して『セブン☆スター』は、もうちょっと別の路線に入っている。とりあえず、ケンカ以外の部分で登場人物がよく動く。ヴァイタリティを前に出すことで場面そのものが非常に活発になっているのである。今後にシビアな展開を予想させる箇所もある。本筋は「セブン☆スター」とフリーマンの決戦に向かっていくのだろうが、細部にはやがて作品の奥行きとなるような人間ドラマが発芽している。

・その他柳内大樹に関する文章
 『ギャングキング』
  21巻について→こちら 
  20巻について→こちら
  19巻について→こちら
  18巻について→こちら
  16巻について→こちら
  15巻について→こちら
  14巻について→こちら
  13巻について→こちら
  12巻について→こちら
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
 『ドリームキングR』(原作・俵家宗弖一) 
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら 
  3巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『新説!さかもっちゃん』1巻について→こちら
 『スマイル』(永田晃一との合作)について→こちら
 『柳内大樹短編集 柳内大樹』について→こちら
  「バンカラボーイズ」について→こちら
  「オヤジガリガリ」について→こちら
 『ドリームキング』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
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