ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年04月27日
 海街diary 1 (1)

 『海街diary1 蝉時雨のやむ頃』(ほんとうは憚るっぽいほうの漢字でセミ)は、ひさびさに、国家規模の陰謀も遺伝子レベルの天才も出てこない、現代的な日本の風景を扱った吉田秋生のマンガで、そうそう、こういうのが読みたかったのだよ、と思いつつ、ページをめくる。幸、佳乃、千香の香田姉妹は、鎌倉の、今は亡き祖母の旧い一軒家に、三人で暮らす。遠い過去に、父親はよその女と家を出、母親もべつのところへ再婚していったからだ。社会人として生活する彼女たちのもとへ、その父親が胃ガンで急死したとの報せが届く。しかし、十数年も会っていない父親の死は、これといって強い感情を引き出すことのないものであった。ただ気が重いなか、葬式に出席するため、新幹線で向かった先で、彼女たちは、母違いの妹すずに出会う。まだ中学生にもかかわらず、気の張りつめた態度を崩さないすずの、その寂しさと危うさに気づいた三姉妹は、彼女を引き取り、一緒に暮らそうと思う。こうして四姉妹になった女性たちの、明るく賑やかで、それでいて、どことなく悲しみを帯びた日常が綴られていく。家族ないし血の繋がりというテーマは、この作者の作品につねに付随する要素ではあったが、それをこういう、ゆったりとした時間の流れのなかで、じっくりと描くのは、けっこうはじめてのことなのではないか、という気がする。劇的な事件が起きる、というよりも、身近なトピックや変化が、登場人物たちの心を揺らす。けして派手な物語ではないが、読めば読むほどに、複雑で鮮やかな感情に気づかされてしまうのは、さすが、である。ところで佳乃の恋人である藤井朋章って、『ラヴァーズ・キス』の彼と同一であるのかな、〈彼が抱えているなにかはあたしじゃ持ってあげられないんだな〉という言葉からして、微妙にリンクしている。

・『イヴの眠り』
  4巻について→こちら
  2巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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