ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年04月27日
 弘兼憲史の『島耕作』シリーズは累計2880万部の売り上げを突破したという。一方で、高橋ヒロシ『クローズ』の売り上げは累計3200万部だそうだ。単行本以外のヴァージョン(コンビニ売りの版など)がどう計算されるのかは知らないし、そもそも単行本を買って読む人間ばかりではないにしても、こうした数字に含まれる影響力というのは、すくなからず、ある、だろう。しかしながら、いわゆるマンガ批評、とくにサブ・カルチャーから社会を考える式のものにおいては、それらを無視することが通例であるように思われる。さらに『島耕作』と『クローズ』を並べたのは他でもない。双方ともに、ホモソーシャルな価値観によって支えられている内容であるけれども、一般的に『島耕作』を支持するメインの層は団塊の世代だといわれ、『クローズ』を支持するメインの層は団塊ジュニアだとされている。が、もちろん、団塊の世代ばかりが『島耕作』を読んでいるわけではないし、団塊ジュニアばかりが『クローズ』を読んでいるわけでもあるまい。そうしたとき、問題になってくるのは、それらの、男性の生き方を描いた作品は、はたして、ほんとうに男性に生き方を教えられるか、ということである。不良をかっこうよく描くことと、かっこうよい不良を描くことは、むろん根本的に異なる。これを些事としてスルーしてしまう考えが、人びとの指向と思考とを貧しくする、というのは、いや、ごめん、こちらの個人的な妄想だろうか。

 さて、本題である。掲載誌が変わり、原作(俵家宗弖一)がついたが、物語上は『ドリームキング』の直截的な続編に他ならない、柳内大樹の『ドリームキングR』1巻であるけれども、やあ、これは駄目だあ、高く買えるところがほとんどない、というのが正直な感想である。『ギャングキング』との差異をどのへんに置いているのかわからないが、作品の比重は、以前にも増して、ファッション業界を舞台にした成り上がりの部分よりも、都市空間におけるギャングの抗争といったファクターがでかくなってしまっていて、これに比べると、同じく疑似ストリートじみた内容でも、あれほどまでに破天荒であった『TWO突風!』(藤井良樹・旭凛太郎)のいかに良く出来ていたことか。だいたい、デザイナーとして成功するため、いちいちケンカをしなければならない、というのは、ちょっと理解できない世界だぜ。いま現在の柳内のネームヴァリューならば、それ相応に売れはするんだろうが、うーん、まあね、作者がいったいどういうつもりで、主人公のジョニーに〈いつの間にか……大切なモノを見失っていたなぁ……〉と言わせているのかを考えると、悩ましい気分になるよ。しかしながら、だ。巻末の、前日譚にあたる第0話のように、お年寄りを絡ませたワン・エピソードのものを描くと、その秀逸さを回復させるのだから、侮れない(たしか、これは柳内単独名義で発表されたはずだ、とはいえ、この巻のなかではもっとも発表が旧いエピソードなので、そうした評価が当てはまるかは微妙だが)。まあ『ガキ・ロック』や『情霊記』など、人情をメインに据えた内容のせいで振るわなかった過去もあるだろうが、どうか今一度、これまでに培った実力でこそ、その手の題材に真っ向からチャレンジして欲しい、と願う次第である。

・『ドリームキング』に関する文章
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら

・『ギャングキング』に関する文章
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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