ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年04月24日
 イカロスの山 7 (7)

 ついに、ついに、ついに、〈ここより高いところはありませんっ / 今ぼくたちは名なし山の頂上にきましたっ…………〉と告げられるそのときが、やって来た。塀内夏子『イカロスの山』の7巻である。さまざまな受難を越え、その「神々の頂」に登頂した平岡と三上の日本隊は、人類の歴史のなかで、今まで誰も見たことのなかった景色を目の前に、深い達成感を覚える。ここで幕が下りたならば、まさしくハッピー・エンドというに相応しいところなのだが、しかし、作者も読み手も登場人物たちも皆、まだ、この物語に結着がつけられていないことを知っている。〈ここまでいろんなことがあったのに帳消しになったみたいだ〉と三上が呟き、いよいよそこから立ち去ろうとするとき、平岡の脳裏をかすめたのは、三上の妻である靖子の姿であった。それが何かしらかの兆しであったかのように、濃い霧が、じょじょに視界を遮ってゆく。〈下山時の遭難が7割を占める〉ヒマラヤでは、〈本当の闘いはこれからなのだ〉とベース・キャンプで無事を祈るしかない人びとのもとへ、はたしてふたりは生還することができるのだろうか。いやあ、ここまでの展開も、十分に予断を許さぬものであったけれど、それ以上の苛酷さをこうして描き、またもやふたりの生き方を試そうとするかよ、と、ストーリーの手綱をさばく塀内の腕前に、感嘆させられる。地上までの遠く感じられる距離が、平岡と三上のあいだにある、いわく言い難い逡巡と重なり、いまだに彼らの運命が流転の最中にあることを、こちらに知らしめるからだ。作中で何度も予告されているとおり、ふたりとも欠けずに山を下りることができても、かつての日常はもう戻ることはない。それでも彼らは、物語に結着をつけるため、文字どおり命を懸け、地上へ帰ろうとするのである。

 5巻について→こちら
 4巻について→こちら
 3巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら

 『雲の上のドラゴン なつこの漫画入門』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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