ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年04月22日
 楽園のトリル 1 (1)

 一歩あるけばひとつ災難に遭う、というぐらいの不幸体質に悩まされる鹿谷律は、高校進学を機に、そうした自分の運命を変えようとの決意をするのであったが、入学して早々、校内でも有名な問題児である篁映里と出会い、それをきっかけに、よりハードな毎日を送る羽目となってしまう。藤田麻貴『楽園(エデン)のトリル』の1巻である。基本的には、庶民感覚で健全性をまとったヒロイン対サドっ気抜群でリッチかつ才能のあるハンサムさん、式のフォーマットを採用したラヴ・コメディだが、そこに、嫌々ながらの共同生活的なファクターが挿入されている。医師から胃潰瘍の診断をくだされた律は、幼い弟たちの育児など、せめて家庭内のストレスからは助けてやろうという両親の判断によって、学校寮に入ることになるのだけれど、特殊な制度のせいで、篁とペアになってしまい、ほとんど同じ部屋で生活することになるのである。このへんが、おそらくは要所で、物理的に手が届きそうな、主役格二者の、微妙な距離感が演出されているのだが、男性の側である篁に、他人を拒絶する暗い影を負わせることで、律とのあいだに精神的な隔たりを置き、そうすることによって、両者に性的な干渉が意識されながらも、べつにそれが、作中人物のみならず読み手からも、望まれることのない構図が出来上がり、したがって安易なセックス(性交)が、表現の目的とはなりえない安全弁の役割を果たしている。作者はカヴァー折り返しのコメントや巻末のコメントなどで、リリカルな物語にしようと思っているのになかなかなってくれない、というような旨を冗談交じりにいっているけれども、リリカルと言うからそうは見えないのであって、一対の人間関係を緊張させるピュアラブルなエモーションをベースに、しっかりとした足どりで、物語は進んでいるように思う。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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