![メフィスト 2007年 05月号 [雑誌]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/B000P0I44Y.01._SCMZZZZZZZ_V23950956_.jpg)
『メフィスト』5月号掲載。北山猛邦の『メフィスト学園―妖精の学校』は、いっけんファンタジックな意匠の小説であるが、最後まで読むと、近未来SF的な発想に基づいていることがわかる。ある意味で、この作者が執着する世界観、この世界の終わりを背景にした作品だといえる。そこは孤島、記憶を失くしたままベッドの上で目覚めた少年は、同い年ぐらいの、同じように鳥の名前を持つ子供たちからヒバリと呼ばれ、妖精になるべく『妖精の学校』へ通うこととなる。また、その島には、教師と魔法使いのほかに大人の姿はなく、いくつもの定められたルールによって、ゆっくりとした時間と、変化のない秩序が保たれていた。そうした環境に疑いを持ったヒバリと、その仲間の行動が、物語を転がしていくことになるわけだが、いやあ、最後の最後に示される数字の意味を理解し、そこから引き返すようにして、作中に散らばる抽象的なメッセージの裏を考えていくと、なかなかに現代日本的な問題を孕むシリアスな設定で、それを隠蔽しつつ、仄めかす。ワン・アイディアを徹底させるための装置に凝った内容であり、そのことに気づき、動揺し、驚かされた。
『少年検閲官』について→こちら
『「ギロチン城」殺人事件』について→こちら