ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年05月26日
 『S-Fマガジン』7月号掲載の短編小説。少女が14歳のとき、叔父の後妻が亡くなった。彼女は、人間のようでありながらも人間と扱われることのない「野天人」として存在し続け、やがて尽きたのだった。その死が掘り起こす過去の記憶、そして夢想の数々によって翻弄される運命は、いったいどこへ落ち着くのか。デビュー作にあたる『ラス・マンチャス通信』が、ある種の純粋さをもって禍々しくも鬱々とした世界をいかにしてサヴァイヴするかという意味で、青春小説的でありえたように、この作品もまた同様の傾向を為している。クラスメート、叔父、叔父の後妻、母親、父親、忌むべき対象がじょじょにスライドしてゆく手法は、不安定な自意識を描写しているみたいだ。そのような展開を印象深くしているのは、瓦解しているわけではないけれども、すでに形骸化してしまった共同体が、それでも抑圧として動く姿を捉まえているからなのだろう。抗おうとすれば、たちまち異端と化す。あるいは、現実を支えるバックボーンなどどこにもないため、抗う自分以外のものすべてのほうが異端なのではないか、といった倒錯が生じる。いずれにせよ違和感を信じて、足を一歩踏み出してしまえばもう二度と、元いた場所へ戻ることはできないのだ。葬儀の次の日、朝焼けの街を透かして見つけたもの、それはたぶん、チャイルド・フッドの終わりである。

 『ラス・マンチャス通信』についての文章→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書。
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