ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2014年02月05日
 蒼太の包丁(41)完結 (マンサンコミックス)

 コミックスの奥付に、この41巻は「平成24年11月6日号より平成25年3月5日号までの漫画サンデーに連載されたもの」とあるので、それから少々間が空いたことになるけれど、無事に最終巻の出た『蒼太の包丁』である。おそらくは掲載誌の休刊に合わせた完結だったのだろうが、きちんとまとまり、ほとんど過不足のないエンディングが描かれているように感じられるし、その見事さは、マンガの内容と相まって、作者(この場合は末田雄一郎と本庄敬)の誠実であるような姿勢と結びついた成果なのかもしれないね、と思わされる。いずれにせよ、満足と同義に見られる大団円が描かれているのだった。

 再三述べてきた通り、『蒼太の包丁』は、日々の営みを時間軸のタテ糸として強調し、これに変化を盛り込むことで、(エピソード単位でストーリーを量産していく料理マンガによくある)人間模様のスナップである以上のドラマを具体化していた。完結にあたり、主人公である蒼太の成長を見守ってきた読み手が最も関心を寄せるのは、やはり、彼の姿が以前とはどう違っているのか、だろう。老舗で働く料理人として店の看板をいかに引き受けるか。そして、そこから自分が独立するためには何が必要か。中盤以降、蒼太が対峙しなければならなかったのは一種の背反だったわけだが、クライマックスに至って、充分に納得のいく答えが出されている。また、二人のヒロイン、さつきと雅美のどちらを蒼太が選ぶのか。まあ、ラヴ・ロマンスが主要な作品ではないとはいえ、それについても、三者が収まるべきところに収まったという印象である。

 将来の「夢」は近づくこともあれば、遠ざかることもある。だが、遠ざかってもなお近づいていこうとするその意志こそが、『蒼太の包丁』においては、時間軸のタテ糸と変化とに試されるものだったのかな、と思う。岐路に差し掛かったとき、蒼太は〈目指すものがあるなら何かが変わっていかなきゃいけないんだ 僕だって今までの修行や経験でそれはわかってるつもりなんだけど…〉と躊躇うばかりでなく、〈為せないことや足りないことを挙げてって 首をひねっているだけではダメだ〉と認識せざるをえない。はっきりいって、周囲の人間が積極的なのに比べ、蒼太はあまりにも消極的すぎる。しかしそれは歩幅の問題にすぎない。小さなストライドであろうと絶えず前に進み続けること。その恩恵は確かにあると、物語の終わりは、蒼太はもちろん、他の登場人物たちの幸福であるような表情を一巡りするなかに伝えている。

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