ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年04月06日
 WORST 17 (17)

 恐怖はどこからやって来るのか。高橋ヒロシの『WORST』は、完全にホモソーシャルな世界の物語なので、女性の登場人物が排せられていると指摘したところで、何も述べていないのと同じことなのだが、しかし物語の序盤から、主人公の月島花にとって、最大のライバルとして表現されていた天地寿がなぜ悪役以外の何ものでもないのかといえば、そのような同性間の連帯すらも信じていない人間であるためだろう。地下で暗躍し、裏切りと暴力によって、巨大さを増した天地のグループが、ついに動き出そうとしていた。拓海の加わった武装戦線は、漆黒の蠍の企みを巧くかわしたが、次にターゲットとされた鳳仙学園は、闇討ちをされ、負傷者を増やしてゆく。というのが、この17巻の流れである。さて、過去にも何度か述べたことであるが、高橋ヒロシは過去作『QP』で作り出してしまった若い世代のアウトローに対する過った憧憬をいかにして上書きするのか、が、ひとつ、『WORST』というマンガの課題としてあると思う。これは、やはり目的のためなら手段を選ばなかった『QP』の我妻涼とは異なるかたちで悪漢を描き、それを否定し、あるいは救うか救わないか、といった部分にかかってくる問題に他ならない。おそらく、そうして創出されたのが、花の陽性と天地の陰性の二極であるわけだが、では、天地と涼のどこがどう違うのかというと、涼は、たしかに壮絶なほどに孤独な存在ではあったけれども、しかし『QP』の主人公である石田小鳥との友情を信じる姿が、こちら読み手の胸を打った、のだとしたら、天地は、先にいったとおり、徹頭徹尾冷酷な人間であり、自分以外の誰も信じていない。この巻における、天地の仲間である(はずの)登場人物の言葉を借りれば、〈さーな…あいつの作り出す闇には誰も入りこめねー〉のである。そのような、人間的なものをいっさい持ち合わせない、いうなれば壊れた人間の行き着く先を、作者はどこまで見据えているのか。鳳仙の月光兄弟光政が、瀕死の状態で、天地に迫ったとき、〈ゾクッ〉と表現された感情が、今後の行方を占っているのに違いない。

 11巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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