ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年04月06日
 HAND’S

 かつては天才的なハンドボール選手だったが、今は落ちぶれ、多額の借金を背負う父親を蔑視し、つよく反発する橘大吾は、将来に何某かの英雄になることを夢見ていた。しかし、ある日突然、父親が失踪してしまったので、その旧くからの友人で小学生ハンドボールのコーチをしている西岡誠一郎の家に預けられることになり、てんやわんやがあった末、一流のハンドボール選手になるための道を歩みはじめるのだった。以上が、板倉雄一『HAND'S(ハンズ)』の概要であるけれど、こうして単行本でまとめて読んだら、結局のところ、このマンガが短命に終わったのは、ハンドボールという題材のせいではなくて、作者のディレクションに難があったからなんだな、と思う。いや、じっさいに作者がどういった方向性を目指していたのかは不明だが、ふつう読み手に、主人公である大吾の成長や試合での活躍、そこから親子の確執などを期待させるようなストーリーでありながらも、ぜんぜんそうなってはおらず、物語のうちでもっとも積極的に動く登場人物は、コーチ役をつとめる西岡に他ならない。西岡の、主人公からの呼ばれ方が、たいてい「おっさん」か「オッサン」であるように、まさしくおっさんでしかなく、ちょうどおっさん調にデフォルメされた容姿で描かれているわけだが、しかし侮るなかれ、作中で唯一熱血しているのが、そのおっさんなのであった。で、少年マンガとしてどうとかいうのはともかく、そうしたことに気づくと、あんがい、これが泣けてくる話なのだよ。西岡、まだ年端のいかぬ少年から完全にコケにされ、それでもその少年の将来と日本ハンドボール界の未来を思い、ヤクザの事務所に拉致されても、文字どおり、命を懸ける男である。また、旧友から裏切られ、大切に育ててきた選手からも裏切られ、ストーリーのレベルにおいては、その行いが十全に報われているとは言い難いながらも、深い思慮でもってすべてを受け入れるあたり、並大抵の人間にできることではなかろう。おそらく、作品がもうちょい長く続けば、つねに人生に現役で前向きな西岡の姿は、リタイアし影へと回った主人公の父親との相対的な役割において、べつの意味を持ち、機能するはずだったに違いなく、たんに扱いの酷いだけで終わってしまったのが、また悲しすぎる存在だ。単行本の表紙にも出てこない。
posted by もりた | Comment(2) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
この記事へのコメント
この漫画オレはけっこう好きだったんだけどね。
やっぱりジャンプは下位打線を愛して何ぼですよ。
Posted by shooter at 2007年04月07日 21:44
定石どおりではない味わいがあるよね。
Posted by もりた at 2007年04月08日 18:23
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