ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年04月05日
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 先般、阿部秀司『エリートヤンキー三郎』のテレビ・ドラマ化や吉田聡『荒くれKNIGHT』の映画化といったニュースが出たときに、それぞれの売り上げを知ったのだが、前者が33巻(1部27巻+2部6巻)の段階で累計400万部、後者が全28巻で累計1000万部(これだと「高校爆走編」の11巻分が入ってない感じなので、それを入れたらもうちょい行くはず)だということで、たとえばヤンキー・マンガ以外のものを例に挙げると、あれだけネームヴァリューもありメディアミックスされているCLAMPの『xxxHOLiC』あたりが現在10巻の時点で累計680万部であることを踏まえれば、なかなか侮れない数字なのではないか。さらに柳内大樹の『ギャングキング』などは、いま9巻まで出ているところで、ほとんどメディアミックスが展開されていない(つまり宣伝が少ない)といえる状態で、累計330万部であり、これにも驚かされる。

 おそらく、そうした購買層の多くが、いわゆるオタクやサブカルといった指向の人びとではなくて、(まあ、議論好きな皆さんの大好きな)下流層だとかファスト風土化(ジャスコ化でもいいよ、あはは)した地方在住者であることが容易に推測できもすれば、いくらでも語ることがありそうなものなのにね、といったことも含め、それらの作品がマーケティング的に考察されたり、あるいは批評の俎上に載せられる機会の少ないことを、とても不思議に思う。

 さておき。この国におけるヤンキー文化そのものがそうであるように、思いのほかサブ・カルチャーにあってはヤンキー・マンガという土壌も侮れない、と考えられるのだった。たとえば、『カメレオンジェイル』や『てんで性悪キューピッド』こそが、という捻くれたファンはともかくとして、90年代のほぼ同時期に、井上雅彦が『スラムダンク』を、冨樫義博が『幽遊白書』を、それぞれヤンキーを主人公にしてスタートさせたのは、時代性(または編集部)の要請があったのかもしれないけれど、その結果、どちらのマンガにも初期には吉田聡の作品を思わせるところがあったのは、じつに興味深いし、また、ハロルド作石が『ゴリラーマン』で、柴田ヨクサルが『谷仮面』で、八木教広が『エンジェル伝説』で、ヤンキーを描くための手法を少しずつずらしながら、現在に通じる作風を確立していったのも、90年代前半のことであり(正確には『ゴリラーマン』は多少先んじているが)、肯定的であれ否定的であれ、すくなからずヤンキー・マンガ的な文脈が、その背景にあったことは指摘できる。

 と、まとまりのないまま、前置きが長くなってしまったけれども、本題は、『週刊少年チャンピオン』の今週号(19号)から連載がはじまった平川哲弘の『クローバー』である。いやあ、これが今日出るべくして出た、といった感じのする不良高校生もので、柳内大樹から日向武史から浅野いにおまでをも参照項に置いてあるかのような作風が、じつにイマドキなハイブリッドさ加減のうえ、それらのマンガ家が無思慮に倫理観の希薄さをリアリズムとして作中へ盛り込んでしまう点さえも共通しているのだが、そうすることで、あくまでも行き場のないモラトリアムの風景としてある伝統的なヤンキー・マンガのテーゼに、現代的な意匠が施されている。
 
 〈オレに友達はいない / オレはいつも1人だ / が…1人でいるのが好きなオレには何の問題もない〉と嘯くトモキは、べつに他人から舐められても心にダメージを受けることはない。そんな彼の家に、小学校のときの同級生で、今はドレッドヘアの強面になり、かつての面影のなくなったハヤトが、何年かぶりに親しく尋ねてくるのだが、〈何なんだ / おまえ / 突然帰って来て / 友達ヅラして / 迷惑なんだよ!!〉という次第でもって、素っ気なく追い払われる。もはや、ふたりの縁は途切れたと思われた矢先、しかし外見どおりのトラブル・メーカーであるハヤトの、街で蒔いたケンカの火種を避けられず、トモキは大勢の不良に取り囲まれてしまうのだった。

 以上が1話目のおおよそであるけれど、そこの間には、いくつか、今後の展開を匂わせるようなアイテムが組み込まれている。トモキの亡き父親が残した廃バイクや、ふたりの友情の証である二宮金次郎の像、ハヤトの持つ謎の大金などが、それである。そのうちでも、形見に近しい壊れたバイクを修理する、という設定は、言うまでもなくヤンキー・マンガにおいては、古典的ですらある通過儀礼、成長のためのイニシエーションであろう。こうしたセオリーを(たとえ作者が無意識であろうとも)踏襲している一方で、いかにも他人を見下したトモキの態度が、じつに今日ふうなアパシーを象徴しているのが興味深い。

 これまで同誌で読み切りの、ほとんど話の筋がない、雰囲気重視の短い作品を発表してきた平川哲弘が、どれだけ長尺の物語をつくれるのかは未知数ではあるが、良い個所も悪い個所も含め、ヤンキー・マンガの現在点を知るための一端として、今後も注目していきたい。
posted by もりた | Comment(1) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
この記事へのコメント
はじめまして^^

私の旅行ブログで
こちらの記事を紹介させて頂きましたので
ご連絡させて頂きました。よかったらご覧下さい。

紹介記事は
http://tetudouryokou.blog97.fc2.com/blog-entry-165.html
です。

これからもよろしくお願いいたします^^
Posted by 鉄道で国内旅行 at 2007年04月05日 14:55
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