ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2013年10月19日
 ウルトラ・レッド(1) (チャンピオンREDコミックス)

 同じく『週刊少年ジャンプ』の出身であり、同じくアクションの豊富なマンガを得意としながら、同じく『週刊少年ジャンプ』のメインストリームからは外れていってしまった鈴木央が、このコミックスの1巻のオビに推薦文を寄せている。周知の通り、鈴木には同じく『Ultra Red』というタイトルの作品がある。このへんはまあ、洒落になっているのだろうが、それはともかく、野口賢の『ウルトラ・レッド』は西村寿行の小説『往きてまた還らず』を下敷きにしたクライム・サスペンスである。野口にはこれまで、夢枕獏を原作とした『KUROZUKA-黒塚-』『狗ハンティング』や、冲方丁を原作とした『サンクチュアリ THE 幕狼異新』などがあるけれども、まさか現代的な異能系ヴァイオレンス(文芸)とのコラボレーションを網羅するつもりか。今度は西村寿行ときた。そしてもちろん、作品の方向性はこの作者にお馴染みの行間が大きいサイキック・バトルを思わせる。

 テーマのレベルで見るなら、並行して(あるいは先行して)連載している横山光輝のリメイクである『バビル2世 ザ・リターナー』の双子ともいえる。我々(と呼ぶべき価値基準を共有した集団)は既に謎の敵に侵略され、支配されている。我々だけがそれを知らずにいる。こうした陰謀論が真であるような世界で、徹底的に個人化された人物が、その謎の敵に対し、単身で戦いを挑んでいくのである。おそらく背景には、この国の戦後史が、またはこの国とアメリカ合衆国との関係が、参照されるべき項目として横たわっている。かいつまんでいうなら、日米安全保障条約の問題があり、地下鉄サリン事件があり、アメリカ同時多発テロ事件があり、さらには東日本大震災以降の、福島第一原子力発電所事故以降の日本人から見られる世界像や国家観が、正体不明な脅威と攻撃とに変換され、サイキック・バトルのイメージを織り成しているのだ。

 確かに『バビル2世 ザ・リターナー』の主人公は、アメリカ合衆国に戦争、もしくはテロリズムを直接仕掛ける者であったが、『ウルトラ・レッド』の主人公はこの国の内戦、もしくはテロリズムに直接立ち向かう者となっている。しかし、それらはたぶん、同根の現象として扱われているのである。

・その他野口賢に関する文章
 『バビル2世 ザ・リターナー』(原作・横山光輝)
  1巻について→こちら
 『サンクチュアリ -THE幕狼異新-』(原作・冲方丁)
  1巻について→こちら
 『狗ハンティング』(原作・夢枕獏 / 構成・子安秀明)
  3巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『KUROZUKA -黒塚-』(原作・夢枕獏)
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2013)
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