ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2013年10月13日
 FACE to Face(初回限定盤)(DVD付) FACE to Face(通常盤/初回プレス仕様)(DVD付) FACE to Face(通常盤)

 自分の経験則に従っていうなら、悲しいことは重なる。その悲しみが大きいほど重なるものである。10月9日、夜、ほとんど同じタイミングで二つの悲しい報せを聞いた。形容しがたい欠落がすぐそばにあった。闇があまりにも簡単に目の前を暗くした。一つは大変プライヴェートな出来事なので、ここでは触れないが、しかし、それだけでも充分こたえたというのに、もう一つ。まさかのニュースが悲しみをダブルにした。所属事務所との契約解除により、KAT-TUNから田中聖が脱退した(正確には9月の末に脱退していた)と聞いたのだ。KAT-TUNに田中くんがいない。悲しみはいつだって信じたくない現実を通して現れる。ああ、これもそのような教訓の一つなのだろうか。

 結局のところ、今年の5月にリリースされた「FACE to Face」は、後に期間限定で配信された「BOUNCE GIRL」を別にすれば、5人体制のKAT-TUNにとって最後のシングルになってしまった。正直な話、(少なくとも自分にとっては、と留保しておくけれど)ここ数作のシングルは、必ずしもKAT-TUNのポテンシャルを全開にしていたと受け取ることができなかった。悪くはないんだけどね、とは思う。でも、「悪くはないんだけどね」式に設定されたハードルなどそもそも無関係であるような高みにこそKAT-TUNのポテンシャルが見られたのではなかったか。タイアップである映画『俺俺』のテーマにそくしてアイデンティティの行方を題材にした「FACE to Face」は、早口のヴォーカル・メロディにユニゾンの強調、そしてフェイクのストリングスと打ち込みのビートという5人体制のKAT-TUNにスタンダードな方法論で組み立てられている。確かにここにはKAT-TUNならではのエピックがある。ロマンティシズムがある。ダークなヒロイズムがある。燃えてくるものがある。他方で、ある種の疑問が残る。物足りなさと換言してもいいそれがある。なぜだろう。

 6人体制のKAT-TUNが08年に作り上げた驚異の傑作アルバム『KAT-TUN III -QUEEN OF PIRATES-』(の初回限定盤のボーナス・トラック)に収録されていた「12 o'clock」の歌詞を引用したい。それはつまり、冒頭の〈Updateされたマシンで・Freeway駆け出そう・Next stage目指して・今しか出来ないRendezvous〉という箇所である。実際、「12 o'clock」が名曲ばりのハイ・センスを発揮していたのは、それがボーナス・トラックであるにもかかわらず、ネクスト・ステージを目指すのに相応しいアップデートされたマシンのようであったからだ。さらに同時期のシングル・ヒット「DON'T U EVER STOP」がそうであったように、このときのKAT-TUNはアップデートされたマシンを次々乗り継ぎ、正しくフリーウェイのど真ん中で現在進行形のランデブーを繰り返しながら、最強のポジションを確立していったのだ。6人が5人体制になっても停滞だけは決して引き受けなかった。そのことは2010年のアルバム『NO MORE PAIИ』や2012年のアルバム『CHAIN』の内容にきっちり刻印されている。

 あるいは、2010年のシングル「Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜」のスタジオ・ヴァージョンと脱退した赤西くんによるオートチューンのパートを田中くんのラップと中丸くんのヒューマンビートボックスに置き換えたライヴ・ヴァージョンとを聴き比べてみるべきだろう。そこには当のメンバーたちが楽曲のアップデートに対していかに自覚的であるかがくっきり明示されている。誤解をおそれずにいえば、ここ数作のシングルに関し、いくらか乏しかったのは、そうした「アップデート」されていくことの感覚である。もちろん、通算20枚目となる2013年のシングル「EXPOSE」のイントロ、07年のシングル「Keep the faith」を彷彿とさせる鋭いギターのリフに『NO MORE PAIИ』に収録されていた「RIGHT NOW」を引用するというマッシュ・アップ的なアプローチには、過去を参照して、さらなる更新を果たすかのようなアップデートへのきざしがある。だが、それがどこまで徹底されていたのか。ネクスト・ステージのサプライズをもたらしていたかどうかは、微妙なラインの判断になってくるものの、また別の問題なのだ。

 それこそ「EXPOSE」で歌われている〈ギリギリの状況じゃなきゃ味わえない昂揚感〉とは、あの06年のデビュー・シングル「Real Face」における〈ギリギリでいつも生きていたいから〉という宣言の繰り返しにほかならない。「ギリギリ」は修辞である。カッティング・エッジであることの同義でもある。常にカッティング・エッジであり続けること。これは当然、もうあとはないんだぞ、といった底辺寸前のサヴァイヴァルを意図しない。確かにKAT-TUNの活動状況をかえりみると、いささか予言的ではあるが、ベクトルはむしろ逆さまであって、どれだけの高みであろうとより高みを望む。墜落のリスクに惑わされない。飛躍、トライアルを指しているのだ。だからもし、スタンダードな方法論を選んだ「FACE to Face」に物足りなさを覚えるとしたら、それはそう、KAT-TUNならばまだこの先に挑めるはずだろう、このような(過剰かもしれないが)期待の裏返しなのだと思う。

 おそらく、必要なのはタイアップのチャンスのみではない。それにも増して、アップデートされたマシンとしての楽曲が必要とされているのである。しかし、そのとき、ここしばらくは控えめにされていた田中くんの、すなわちJOKERのラップは再びのキーとなるに違いなかった。2012年のシングル「不滅のスクラム」において最もスリリングだったパートはやはりJOKERのラップであったし、それはデビュー以前からずっとKAT-TUNをKAT-TUNたらしめていたトレード・マークの一つでもあった。自分がKAT-TUNにはじめてびびっときたのは、実は日本テレビの『ウタワラ』のコーナーのいつだったか、DEEP PURPLEの「SMOKE ON THE WATER 」をKAT-TUNがカヴァーし、ギターのリフに合わせて田中くんがラップしている姿を目の当たりにした際で、こんなアイドルがいるのかよ、と衝撃を受けたのだった。その衝撃はまた、デビュー以降のシングルについても同様で、強力なフックのいくつかはJOKERのラップとともに存在していたのだ。それだけに田中くんの脱退は信じがたい。ショックだよ。

 先にも述べた通り、赤西くんの脱退を経て「Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜」はライヴ・ヴァージョンとしてリ・アレンジされ、アップデートされた。そこでのキーはまず間違いなく、田中くんのラップであった。田中くんが脱退した今、残されたメンバーは4人体制のKAT-TUNにピントを合わせて、過去の代表曲を、それがコンサートで披露される可能性がある限りは、洗い直さなければならない。絶対に欠かすことのできない「Real Face」はまあ、これまでのコンサートでも他のメンバーがラップを(余興としてではあるが)担当する機会があったので、やれる、だろう。じゃあ「喜びの歌」は。「LIPS」は。「ONE DROP」は。単なる引き算で再構成されるだけだったら寂しい。不安のタネは尽きないのである。無論、KAT-TUNならばどんな困難も踏み越えられる。亀梨くんだったら、中丸くんだったら、上田くんだったら、田口くんだったら、異色のスターダムを必ずややり遂げる。と、信じるしかないのだけれど、現段階ではあまりにも根拠が弱い。

 6人でも5人でも4人でもKAT-TUNはKAT-TUNに変わりないというのは、ある種の価値観であろう。だが、絶対の真理ではない。6人体制のKAT-TUNと5人体制のKAT-TUNのあいだには、どうしたって無視できない揺らぎがあった。それを抜きにして、KAT-TUNはKAT-TUNに変わりないというのは、さすがにいい加減である。誤魔化しである。そうした揺らぎをむしろ、『NO MORE PAIИ』や『CHAIN』のようなトライアルへと見事転じてみせたところに、5人体制のKAT-TUNのポテンシャルはあったのだ。

 ただし、その5人体制のKAT-TUNも終わった。田中くんの脱退とともに区切りがついてしまった。返す返すもショックだし、非常に悲しい。そう簡単に気持ちの整理ができるぐらいだったらこんなにもファンになってやしねえんだ。しかるに4人体制のKAT-TUNがどんなキャリアを築いていくのか(これはいよいよメンバーの年齢が30歳代に入ろうかというKAT-TUNがどのようなヴィジョンを出してくるのか、でもあるが)。まだ何もわからないのである。

・その他KAT-TUNに関する文章
 「WHITE」について→こちら
 「CHANGE UR WORLD」について→こちら
 『NO MORE PAIИ』について→こちら
 「Going!」について→こちら
 「Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜」について→こちら
 『Break the Records -by you & for you-』について→こちら
 「RESCUE」について→こちら
 「ONE DROP」について→こちら
 「White X'mas」について→こちら
 『KAT-TUN III - QUEEN OF PIRATES』について→こちら
 「DON’T U EVER STOP」について→こちら
 「LIPS」について→こちら
 「喜びの歌」について→こちら
 『Cartoon KAT-TUN II You』について→こちら
 『Live of KAT-TUN “Real Face”』DVDについて→こちら
 「REAL FACE」について→こちら

 DVD『KAT-TUN LIVE Break the Records』について→こちら
 DVD『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』について→こちら

 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2012 CHAIN』(2012年4月20日・東京ドーム)について→こちら
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 PART2:WORLD BIG TOUR』(2010年・東京ドーム)
  7月24日の公演について→こちら
  7月17日の公演について→こちら
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 公開リハーサル』(4月28日・さいたまスーパーアリーナ)について→こちら
 コンサート『不滅の10日間ライブ KAT-TUN TOKYO DOME 2009』(09年・東京ドーム)
  6月15日の公演について→こちら
  5月22日の公演について→こちら
  5月18日の公演について→こちら 
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』(08年8月5日・東京ドーム)について→こちら
posted by もりた | Comment(1) | TrackBack(0) | 音楽(2013)
この記事へのコメント
はじめまして、以前からKAT-TUN関連の記事を拝見させていただいております。
私は音楽にはまったく詳しくはない一般的にはジャニヲタと表現される部類に居るかと思います。
『KAT-TUN III -QUEEN OF PIRATES-』は間違いなく傑作アルバムだと思っています。
とても好みの曲が詰まっている素晴らしい作品です。
私は現在もKAT-TUNを応援していますが、今友人におススメの一枚を紹介してと言われたら。
きっとCHAINか最新のアルバムを紹介するでしょう、どんなに傑作でもこれからのKAT-TUNに興味を持つであろう人物に『KAT-TUN III -QUEEN OF PIRATES-』を勧めるのは何の意味のないことなんですよね。
それくらいまったく別のものになってしまったんだと思います。今と昔の変化を比べる対象にもならないんです。
今が良い悪いとかではなくまったく違うものなんだと思います。
1一人目の脱退の時にく比べれば商業的なダメージは少ないでしょが、音楽活動の面ではとても必要な重要な人物たったんだと思います。
個人としては他に重点的に応援しているメンバーが他にいますが、きっと田中君がKATーTUNに居なければ興味のないグループだったと思います、それくらい重要なパブリックイメージを持つ人物でした。
久しぶりにこちらのブログを思い出しお邪魔させていただきました。
突然の長文失礼しました。
これからのKAT−TUNの過去の曲は歌割から新曲を聞くような楽しみを与えてくれることを期待しております。
またKAT-TUNについて書かれることを楽しみにしております。
Posted by cisaki at 2013年12月04日 19:18
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