ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2013年10月05日
 Feast of Love

 ギター・ポップ。シューゲイザー。グランジ。そして、エモと呼ばれるポスト・ハードコアの一群。これらを四つの象限とし、真ん中に小さなスクエアを描くようなサウンドが米ミシガン州アナーバー出身の4人組、PITY SEXのファースト・アルバム『FEAST OF LOVE』の主要を為している。WEEZERの影響を彷彿とさせるところもあるのだけれど、90年代の終盤、日本のSUPERCARに対応してイギリスから登場してきたLLAMA FARMERSのことを思い出した。LLAMA FARMERSのセカンド・アルバム『EL TOPPO』(00年)はシューゲイザーとエモのミッシング・リンクと解釈することのできるものだったが、それをもう少しパワー・ポップのシンプリシティに寄せていった印象であるし、実際、音響レベルの緻密さがどうこう凝っているというより、ジャブに喩えられるコンパクトな挙動の楽曲が『FEAST OF LOVE』の大半を占めているのだ。アルバムのランニング・タイムは30分に満たない。

 もちろん(いやまあ「もちろん」と言い切っていいかどうかはともかく、それがこの手のサウンドにおいては魅力の一つとなりえる以上)ヴォーカルは男女のダブルである。とりわけ、ギターを兼ねる女性ヴォーカルのスウィートでアンニュイな歌声は、ナードのロマンティシズムとジャスト・フィットするかのような。そういうドリームを充分に持っている。ギター・ポップやシューゲイザーのファンにだってアピールするものだと思う。女性ヴォーカルがメインの楽曲もあれば、男性ヴォーカルがメインの楽曲もある。ハーモニーも当然ある。正しくデュエットである3曲目の「DROWN ME OUT」を聴かれたい。典型的なヴァース・コーラス・スタイルのミドル・テンポだが、ざらついた触感のプロダクトはインディならではの特性であって、下地に置かれているのは明らかにアメリカン・オルタナティヴの文脈だろう。HUSKER DUやTHE PIXIESあるいはTHE BREEDERSへと通じながら、パンキッシュなアプローチは除けられ、そのかわり低音のグルーヴが強調されているところに、WEEZERをある種の参照点としたグランジ以降のパワー・ポップ、パワー・ポップのラインに等しいエモの力学を発見できる。男性ヴォーカルは微温のまま、先述した女性ヴォーカルと交差することで、モノローグに封じ込められないメランコリーを獲得していく。同一のフレーズを繰り返すタイプのギター・ソロも、ここでは大変ツボを押さえているといえる。

 3曲目の「DROWN ME OUT」ばかりではない。ソング・ライティングのセンスは極めてグッドである。ラスト・ナンバーの10曲目「FOLD」において幕を閉じるそのフィードバックのノイズが1曲目の「WIND-UP」に対してはイントロの役割を果たしている点を含め、アルバムの構成もきっちりバランスが取られている。前作にあたるEPの『DARK WORLD』(2012年)に比べ、レコーディングのクオリティが随分あがり、轟音はだいぶ整理された。ギザギザに尖った初期衝動の勢いが薄らいでしまったのは残念だけれど、バンドの指向に関してはいよいよ焦点が定まってきたという感想を抱く。シューゲイザーのアメリカン・リヴァイヴァルとしてはWHIRRやNOTHINGほど本格派ではないものの、それらと共鳴しつつ、THE WORLD IS A BEAUTIFUL PLACE & I AM NO LONGER AFRAID TO DIEやDADSなどポスト・ハードコアの新しい世代ともシンクロナイズドしうる可能性が、『FEAST OF LOVE』の、そしてPITY SEXに固有のアドヴァンテージとなっているのだ。

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posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2013)
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