ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年03月25日
 スチームボーイ 上 (1) スチームボーイ 下 (3)

 〈“常識を超えねば進歩はない!! ぼくの発明で世界は変わるんだ!!〉。1863年のイギリス、名だたる発明家である祖父と父親を尊敬する少年レイ・スチムは、新しい蒸気機関車を見に出かけたマンチェスターの駅で、文明批判を主旨とする“七つの封印”教団による暴挙に遭遇する。蒸気機関車が破壊され、鉄クズ呼ばわりされているのに衝撃を受けたレイは、〈未来はそんなんじゃない!! これは鉄クズなんかじゃない!! これは夢のかたまりなんだ!!〉と叫ぶ。こうして結びついた“七つの封印”教団との因縁が、レイに様々な出会いをもたらす冒険へと導くのだった。上下巻同時刊行となった衣谷遊のマンガ『スチームボーイ』は、言うまでもなく大友克洋による同名のアニメ映画をベースに描かれており、主人公や一部登場人物、設定は重複するけれども、映画そのもののコミカライズというのではなくて、いわば前日譚に位置する内容になっている。もちろん映画からの引用も少なくはないが、これはこれで一個の独立した作品として読める。ところで映画版の『スチームボーイ』であるが、一般的な評価はどうも高くなかった印象だけれど、個人的には、そんなに悪くなかったよお、と言いたい。大友の映像上の演出がいまいちなのは、それこそ映画版『AKIRA』の頃(あるいは、それ以前)から言われていたことでもあるので、そこを問題視しても仕方がないし、そのことを含めても、たとえば宮崎駿の映画で少女に仮託されたイノセンスがロリコンを意味するのと同じように、大友の作品が少年に健全さを仮託するのはショタコンなのであって、いやまあ、ショタコンの語源が『鉄人28号』の金田正太郎に起因しているのならば、まさしく『AKIRA』の健康優良不良少年である主人公らの名前が『鉄人28号』に由来しているのは暗示的なのだが、だから映画『スチームボーイ』に関しては、あくまでも、少年いかに健全であるべきか、を主題に捉まえて見ていくと、やはり相応に見どころのある物語になっていると思う。このマンガ版で、衣谷が描こうとしているのも、おそらくは、それだ。まだあどけない顔つきのレイ少年が、すでに邪な考えを覚えてしまっている大人たちを相手どり、ひたすら無垢に〈ぼくは未来をあきらめない!!〉と、無茶無謀な大立ち回りを演じる姿を、どう効果的に見せるか。むろん、現実の世界にあっては、物心ついた少年が必ずしも健全であるとは限らない。そうであるがゆえに、虚構的な存在にしか過ぎないそれに、はたして説得されるかされないか、式の考えが、内容の出来不出来の判断にも繋がるのだろうが、すくなくとも僕は愉しく読んだ。

 衣谷遊『デビルマン黙示録 STRANGE DAYS』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック