ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年03月22日
 仁義S 3 (3)

 おお、ここで横山を投入するかよ。前作(『JINGI II』を含めれば前々作)からのファンであったならば、にわかに心沸く場面だろう。なぜならば横山こそがザ・任侠・オブ・任侠というに相応しい漢(おとこ)だからである。『仁義S〈じんぎたち〉』は、『本気!』と並ぶ立原あゆみの代表作『仁義』の、その設定と登場人物を引き継いでいるという意味では、まちがいなく続編にあたるわけだけれど、主人公が世代交代のうえチェンジしており、無印のほうでメインを張った面々は、あまり表立って来ず、彼らのその後を知る機会がなかなか訪れなかったなかで、あの横山が、こうして健在であってくれたのはもちろんのこと、未だ一介のチンピラでしかないアキラと大内のコンビを一目見ただけで、〈ま オレに出来る事があったら言ってくれ! 来いと言う場所に行ってやろう 話せっていう言葉言ってやる〉と相談を引き受けるあたり、器のでかいところを損なっていないのも、嬉しい。しかしながら、こういうときにいつも思ってしまうのは、はたして作者はいったいどの段階でこうした展開を用意していたのだろうか、ということで、立原の場合はとくに、それが思いつきなのか計算によるものなのか、一概には判断しづらい。や、正直なところ、たんなる思いつきというか、あ、そういえば、あれはここで使えるな程度の発想に過ぎないのだろうが、それにしても伏線ですらなかったような細部が、後々になって効果を発揮する率が異様に高く、じっさい計算ではないとしたら、驚くべき閃きの持ち主なのであって、その凡人には及びもつかない領域で構成される物語には、毎度毎度痺れる。だいたい、この『仁義S』においては超重要人物である農協だって、そもそも通りすがりのホームレスだったのだ。一、二コマでお役ご免の。それが今やヤクザの大幹部である。ヤクザの大幹部なのに、未だに農協と呼ばれているのは、じつは時効待ちの犯罪者で、それが偽名だからである。立場上、もうちょいべつの名前を名乗ればいいじゃんね、と言いたいところだが、恩義ある親分のつけてくれた名前だから、変えないのである。だからこそ、この巻で農協が発する〈ひょんな事から八崎さんに拾われて この世界に入って 一番大切な事は裏切らねえって事ですよ〉という言葉は生きる。いや、作者がそこまで考えているかどうかは知らない。だいいち、正確には農協を拾ったのは義郎(八崎さん)ではなくて、仁のほうだろう、なぜ仁のいる神林組に行かなかったのか、それは裏切り行為ではないのか、農協。とはいえ、まあ、そういったことも、もしかするとあとで話に絡んでくるかもしれない、もちろん絡んでこないかもしれないので、油断ならない。いずれにせよ、農協の出世も含め、わらしべ長者的に話が転がってゆくのが、この『仁義』シリーズの醍醐味であろう。無印の『仁義』では、エリート・テロリストだった過去を持つ義郎の知性と技術が、仁の成り上がりに役立ったわけだが、『仁義S』においては、医者との兼業である大内が、度胸だけは一丁前のアキラを、横からサポートする。たぶん横山が、アキラたちをおもしろいと評したのは、ふたりの姿に、若き日における仁と義郎の影を見たからなんだよね。

 『ポリ公』2巻について→こちら
 『極道の食卓』第1巻について→こちら
 『月の教室』について→こちら
 『喰人』第1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(2) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
この記事へのコメント
初めて閲覧しました。
私がJINGIに熱くなったのは、まだ20年程前ですが、ヤングチャンピオンで言えば「金原が死んだ翌朝」まだ幼い礼一が「とうちゃん、しゃかなだ」と浅草の水上バスで魚の跳ねるのを喜んでいる話の時。

私も農協は好きですね。
確かに仁に拾われましたが、仁はラーメンを十杯食わして、綾乃先生の情報収集を依頼した。
農協の持つ特技を組織に活かそうと考えたのは義郎。
その後の生活の保障やら、アイデンティティを確立させたり、組織を教え込んだのは、義郎でしょうね。

ですから本当の農協の親は義郎だと思ってるのでは?・・・という勝手な解釈を私はしました。

本当に、いくつものサプライズが立原あゆみの世界では楽しめますね。
横山もそうですし、いつしかドラマに登場しなくなっていたヨネスケもJINGISでは、性格もそのままに偉くなってくれていて。。。

Posted by オレンジポコー at 2011年04月04日 11:06
どうもです。

礼一、ついに「S」のほうにも出てきましたね。
なかなか立派な人物になっていたのにはけっこう感動しました。

オレンジポコーさんの農協の解釈は、あ、なるほど、と思わされました。ありがとうございます。
Posted by もりた at 2011年04月16日 14:06
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック