ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2013年06月08日
 シュガーレス 18 (少年チャンピオン・コミックス)

 週刊連載でマンガを読むことの体験として、たとえば水曜日に『週刊少年マガジン』で市川マサの『A-BOUT!』を読んだ次の日、木曜日に『週刊少年チャンピオン』で細川雅巳の『シュガーレス』を読むというのは、なかなかに悩ましいものであった。どちらも好きな作品である。が、『A-BOUT!』の後追いであるような展開を『シュガーレス』に見かける機会が少なくはなかったからだ。無論、単細胞の一年生が主人公であったり、その彼が不良高校のトップである三年生に挑まなければならなかったり、当初のアイディアにもいくらかの類似が確認できたのだけれど、ストーリーが進むにつれ、他校との抗争や一年生たちによるトーナメント、匿名集団の襲撃など、明らかな重複が目立つようになってきていた。『シュガーレス』が『A-BOUT!』を真似たと言いたいのでは決してない。それはあくまでも掲載誌が出、こちらが目を通すタイミング程度の問題にすぎないし、結局のところ、先に挙げた展開の諸々は、ヤンキー・マンガにおける様式美であり、形式美のヴァリエーションとして十分了解されうる例だろう。したがって、何が悩ましかったのかといえば、ある種の様式美を散々繰り返すしかないヤンキー・マンガのジャンルとその限界について、2010年代の今、あたかもシンクロニシティを起こしているかのような二つの作品を前にしながら、しばしば考えさせられてしまったことにほかならない。まあ、どうでもいいじゃん、ではあるのだけれど、生真面目な性格なんでね。ついつい、ふと、気になってしまう。

 さてしかし、『シュガーレス』はこの18巻で完結を迎えた。先般、同じく18巻を出したばかりの『A-BOUT!』の方はまだ連載が続いているが、奇しくもといおうか、両作品とも主人公が一年生でいられる最後のクライマックスを高校の屋上でのタイマンに設定していたところまでついにダブっていたな。もちろん、『シュガーレス』の場合、そのアイディアは物語がはじまった段階ですでに決定されていたものであろう。そもそも、九島高校の屋上にそびえ立つ風車、そこに自分の名前を書いた旗をかかげることこそが主人公である椎葉岳の目標であったのだ。それはつまり、頂点に君臨するカリスマ、三年生のシャケを倒すことと同義でもあった。そして、極めて単純化するなら、主人公が物語を立ち上げ、目的を果たさんとするあいだに組み込まれたいくつもの展開が、要するにヤンキー・マンガの様式美をなぞらえることとなっていたのである。

 正直にいって、スタート時の『シュガーレス』に対して期待していたのはヤンキー・マンガ以外のイディオムであった。リアリズムを度外視したシャケのたたずまいや、主人公を驀進させる破天荒なパワーやエネルギーにヤンキー・マンガ以前の番長もの、あるいは広義のレベルで「少年マンガならでは」と判断されるようなスペクタクルが垣間見られたのである。だが、前述した通り、総体的な印象としてはヤンキー・マンガらしさが勝っちゃったかと思う。いや、そんなことはなかったぜ、大体主人公とすべきは椎葉岳のみではなく、椎葉岳を含めた一年生四人組じゃねえの、もしくは椎葉と丸母タイジのコンビを主人公と見なさなくてはならない。そう意見する向きもあるだろう。しかし、丸母の不幸なプロフィール、あれは正しくヤンキー・マンガのリアリズムによっていたのであって、たとえ(建前上は)そうしたリアリズムを否定するために必要とされたエピソードであった(事実、椎葉岳の立場はそれを否定している)としても、このハイ・テンションな作品にどれだけ貢献していたかは疑わしい。最終巻の表紙はシャケである。椎葉岳でも他の誰でもなく、シャケこと荒巻至であることはいささか象徴的なのではないか。もしももう一人主人公の候補を挙げるとするならば、やはりシャケだという気がするためだ。『別冊少年チャンピオン』に彼を主人公とした番外編も描かれたが、そのカリスマは明らかにヤンキー・マンガに縛られない自由さからやってきている。この意味で、あくまでもヤンキー・マンガのカテゴリー下に収まる登場人物たちが最後まで誰も彼に敵わないというのは非常に当然の結果ではあった。

 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(1) | TrackBack(0) | マンガ(2013)
この記事へのコメント
わたしも「シュガーレス」は「不良まんが」ではなく、
「不良が戦うバトルまんが」(梅澤春人『BOY』みたいな。いっそ大暮維人『天上天下』みたいでもよかった)を期待したのですが……
わりとフツーの不良まんがになってしまって、残念でした。

「特攻の拓外伝」も不意に終わってしまったし、
「WORST」もようやく(こちらは、ようやく、という感じで、読者としても肩の荷が下りた感じもありますが。笑)終わるようですし、
不良まんが、10年代のあたらしい波は、まだ見えてきませんね。

今後も、森田さまの不良まんがに向ける、鋭くあたたかいご視線、たのしみにしております。
Posted by まこ at 2013年06月17日 07:11
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