ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年02月22日
 『小説すばる』3月号掲載の短篇。〈ガーリー〜GIRLIE〜特集〉というののうちに含まれているのかな、よくわからないけれど、すくなくともこの津村記久子の『炎上学級会』に限っていえば、女性作家が書いたというだけのことで、阿呆みたいなカテゴライズはどうでもよろしい、おそらくは今こうした時代にあり、大勢に身近であろう内容になっていて、やはりこの作家はもうすこし注目されてもいいのではないか、と思う。題にある「炎上」とは、あの、どこそこのブログが炎上したとかいう、現代用語ふうな意での「炎上」を指しており、つまり作中には、インターネットの要素というか、この場合は、匿名による掲示板文化とでもいうべきものが盛り込まれているのだが、だからといって、そういうやり取り、コミュニケーションの在り方を、あたかも深刻で不可避なモーメントぶって大げさに捉まえず、また、そのさいポジティヴかネガティヴかのどちらかの反応へと一方的に傾くのでもなくて、ただ、どこにでも転がる誰もが体験しうる日常の一断片として、肌触りがよく、愉しく読めるテンポで、綴っている。だいたいの筋は、次のような感じである。シゲオのいる小学五年のクラスだけがまだ、文化祭のための出しものを決められずにいるのは、担任の若い女性教師が、積極性に欠ける生徒たちを巧みに指導できないせいでもあり、そこで悩んだ彼女から、インターネット上の掲示板を使い、匿名でもいいから皆で話し合いをするようにとの提案がなされるのであった。こうして、ふだんよりパソコンに慣れている生徒や、まったくインターネットに通じていない生徒が、もちろん携帯電話での閲覧も含め、一個の場を共有し、意見を出し合うなか、まあ当然のように起こる揉め事が軸となり、話は展開される。この小説の最大の成果はしかし、そういった題材の取り上げ方にではなく、むしろそのことを背景の一部に、シゲオという少年の、たとえば塾で書いた作文が悪い評価を受けたことや自分の書き込みに対するリアクションが気になって落ち着かない様子なども交えながら、ことあるごとの心の動きにピントを合わせ、それをうまく操作することで、読後に、良質なジュヴナイル感とでもいうべきものを備えさせた点にある。

 『十二月の窓辺』について→こちら
 『花婿のハムラビ法典』について→こちら
 『君は永遠にそいつらより若い』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(07年)
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