ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年02月20日
 立原あゆみが、お馴染みのヤクザではなくて警察の姿を描いていることは、まあ『ポリ公』という直截的な題名に示されているとおりだけれど、結局のところ、従来の作品と大きく変わった印象がないというのは、さすが、というべきだろうか。いつもどおり舞台は港町、浜西署のなかでも、とくに末端に位置する0課へと配属になった、新米刑事の粟飯原凉二が、持ち前の人情と行動力で、白とも黒ともつかぬグレーのゾーンを生きなければならない立場の弱い人びとを、なんとかして救ってやろうと立ち回る。大まかな話の流れをいえば、そういった感じである。むろん、いつもヤクザを演じている俳優が刑事の役をやるのとは違い、物語という枠全体に、普段とは異なる、各種の制約が設けられているわけだが、それらはしかし、あゆみイズムの前では、些末な問題に過ぎない。たとえば無印の『仁義』ならば、そもそも高いインテリジェンスを持ったテロリストの義郎が、所属団体の組織化されたイデオロギーに懐疑を覚えたため、犬死にであろうとも自分の信じるもののために命を懸けるヤクザの仁の生き方を真だと思い、彼の参謀役を買って出るのを出発点としているように、立原のマンガのほとんどには、どのような組織であれ、その内部の空洞的な部分を批判する眼差しがあり、それがこの『ポリ公』では、警察機構のほうへと転換されている。とはいえ、虚をついた飛び級形式の出世が、立原のもっとも多く用いる展開のダイナミズムであるとしたら、当然のようにそれは刑事が主人公のとき適用し難く、さてそこで、この場合は作中に、シルバーバレットという、法では裁けない悪を断罪する謎めいた存在を組み込んでおり、それを主人公が追うかっこうになっているのであったが、これが正直どうもうまくいっていない。2巻の、ここまでのところでは、どうやら粟飯原の在籍する0課の存在自体が、シルバーバレットと深く絡んでいるみたいなのだけれども、だからどうしたいのか、現時点ではだいぶ掴みあぐねる。

 『極道の食卓』第1巻について→こちら
 『月の教室』について→こちら
 『喰人』第1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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