ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年02月18日
 GOLDEN AGE 3(3)

 いっときは主要少年マンガ誌からすっかりと姿を消したこともあったサッカー・マンガだが、ここ最近になり、ふたたび連載作が増え、その立場を回復しつつあるように思う。そうしたなかにあって、今もっともおもしろい作品はといえば、これはもうまちがいなく寒川一之の『GOLDEN★AGE』だろ、と断言してしまってよい。まだ3巻までしか出ていないけれども、しかしここまでの段階ですでに、十分に読まれる価値がある。サッカー・マンガにかぎらず、スポーツ・マンガ全般またはテレビ・ゲームなどの他のスポーツを扱うサブ・カルチャーを含め、一点突破のスポ根じみた無根拠を乗り越えるべく、フィジカルにメンタルといった論理性と、さらには、それらをチーム単位の手段とする戦略的な要素を盛り込むことで、表現の様式は更新され、ジャンルの活性化が担われてきたといえるわけだが、このマンガのすぐれているところは、そのような段階の推移をあますことなく包括すると同時に、今日的にきわめて良質な、また良心的な、一線級のエンターテイメントをまっとうしている点にある。だいたいストーリーのレベルだけで見るのであれば、元ジュニア・ユースの選手が、自分の中学の弱小サッカー部を立て直し、全国制覇を目指すといった、この手のジャンルにあっては、むしろ古典的なセオリーに忠実なものに他ならない。しかし、ひとりのヒーローの天才的な活躍によってのみ、それが成し遂げられていくのではないし、また単純な努力、つまり練習量の多さだけがチーム・メイトらの成長を保証するのでもない、いや、そういった部分も含みつつ、より説得力のある表現が探られている。むろん、現実的にはそんなことねえよ、という部分もあるには違いないが、にもかかわらず素直に頷かされてしまうのが、フィクションというもののうつくしさ、醍醐味である。このマンガにおいて、それを可能にしているのが何なのか、と作中の言葉を借りて指せば、まさしく白河の魔法(マジック)ということになるであろう。ジュニア・ユースの世界ではエリート中のエリートであった主人公の白河唯は、たとえば試合中に彼が立ち回れば、それだけで勝負が決してしまうほどの特権的な役割を、作者から与えられている。同じジュニア・ユースからの移籍組であるトラやナリアちゃんと比べても、その実力は破格ですらある。だが、それは言うなれば、滅多に抜かれることがないゆえに伝家の宝刀たりうるようなもので、この『GOLDEN★AGE』は、そうした唯のプレイに直截の焦点を合わせるのではなく、あくまでも彼の才覚が(試合の最中に前後の状況を含め)特定の条件下でいかに機能するか、を物語の基礎に置いている。結果、他の登場人物たちの唯に触発される姿を中心に、試合の様子などが描かれることになるのだけれど、序盤においては、有象無象にしか思えなかったチーム・メイトが、じょじょに、その魅力を増し、感情移入の対象になっていく過程は、団体競技が表現されるさいの、あの、メインのプレイヤー+その他大勢といった定型的な読みを、するどくかわし、新鮮な興奮をもたらすに至っている。準主役の近江はともかく、ぱっと見個性のないメンバーが、ここ一番で思わぬ頑張りを発揮する場面が、いい、燃える。そのような内容をおそらくは示すにあたって、題名に用いられたゴールデン・エイジとは何か、おおよその由来は、この3巻のなかに説明されているのだが、それはつまり、すべてに未成熟な少年期には逆にあらゆる可能性が開かれている、といったことの言い換えなのだ、と考えられる。今日においては、壮年や青年向けの作品にかぎらず、少年向けの作品にさえ、挫折や断念が、リアルな感触として入り込み、そこに安易に寄り添う傾向がある。まあじっさいに、少年誌といえども、購買層の何割かは、おっさんが占めているんだろうしね。とはいえ、だ。ハナから夢や希望を信じていない向きが、挫折や断念を重要に感じられるはずもないのであって、むしろ現実には幻滅的な部分が多いからこそ、夢や希望は信じるに値しうるのである。と、すこし話は逸れたが、『GOLDEN★AGE』で披露される唯の手腕、要するに白河の魔法(マジック)は、もしかすると、あの『DEATH NOTE』の月(キラ)の快進撃に近しいカタルシスを、読み手に喚起するのかもしれない。また、そのような話のつくり方におけるテクニカルな面、先読みのできないことからくる展開の妙は、唯の内面が、作中の人間にも、作外の人間にも、けっして開示されないことによって、さらに徹底されている。しかし、先ほどもいったとおり、この作品が伝えてくるメッセージは、とってもポジティヴでシンプルなものに他ならず、そうであるがゆえに、今どき他に類を見ない、冴え渡ったエンターテイメントを具現しているのだ。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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