ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年01月30日
 蒼太の包丁(13) 

 人はどうしてガッツと思い遣りだけでは幸福になれないのだろうか。それはね、誰も非難せず、また偽善的にならないで生きるのは難しく、そういったことの難易度は世の中の複雑さに比例しているからだよ、と言われれば、まあそりゃそうだ。助っ人先である老舗料亭『神かわ』の内部事情に深く関わってしまった蒼太は、〈『神かわ』が後継で困っていることに目をつけて 割り込んで来ようとする料理人も居る…〉ことを知り、思わず〈僕が『神かわ』の跡を継ぐことは出来ませんか?〉と申し出るのであった。はたして蒼太は、いつか故郷で自分の店を持つという夢や長く親しんだ『富み久』の人びとに、別れを告げ、このまま『神かわ』に入ることとなるのであろうか。と、以上が『蒼太の包丁』13巻の、おおきな見所である。このへんの展開は、相応に見所となっているのだけれども、ただすこし、主人公である蒼太の心境が、状況が二転三転するにあたって、たんに流されているだけに思えなくもなく、もちろんそれが、蒼太の良さ、彼の心の柔らかさの表現にもなっているのだが、しかし物語がどう転ぶのであれ、もうちょい、本人の意志の固いところが描かれても良かった。作中、『神かわ』と『富み久』の親方同士が、蒼太の今後をめぐって話し合う場面に、〈男には実の父以外にもうひとり父親が出来ると聞いたことがある〉という台詞があり、じつはこれが蒼太の進退を決めることとなるのだけど、そうして浮かび上がった父と子の関係で結ばれる図式は、先ほど述べたように、蒼太=子の側の主体性が強く感じられないため、あまり効果的だとはいえない。『神かわ』の、本質的な跡継ぎ章介が料理人を断念するエピソードの、どこか物足りない印象も、同様に、子である者の消極的な振る舞いからやって来ているのではないだろうか。話しの内容自体は相変わらずよくまとまっており、料理マンガとしての良質な面をキープしているだけに、些末なことだとしても注文をつけたくなる。

 12巻についての文章→こちら
 11巻についての文章→こちら
 10巻についての文章→こちら
 9巻についての文章→こちら
 8巻についての文章→こちら
 7巻についての文章→こちら
 6巻についての文章→こちら 
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック