
以前までの作品と比べると、巨大なモンスーンといったイメージで語ることのできない、ソリッドなアルバムである。感触としては、デビュー作『プリティ・ヘイト・マシーン』に近い、と言ったら、僕の耳はあてにならないだろうか。ポップだ。うなる激しさや重たさではなくて、変調のリズムとストレートな歌メロが、方向性と色合いを決めている。ポップではあるが、しかし、あいかわらず脳天気な感じはしない。2曲目や3曲目、4曲目、10曲目あたりは、いかにもハード・ロック的な怒濤の展開であるけれども、安易なカタルシスとは縁遠い。一通り聴いたあとでは、むしろダウナーへ一直線の暗黒系スロー・ナンバーである7曲目だったり、妄想いっぱいの独り言をうにゃうにゃした電子音で加工したかのような8曲目などが、つよく印象に残る。まあたしかに、けっして胸のすくサウンドではない。だけど、かつてほど病んでいる気配を感じさせることもない。それはなぜか。たぶん、サイアクだサイアクだサイアクだ、と言い続けることで、最悪の状態の一歩手前で踏みとどまる、そういう後ろ向きで前に進むような姿形を、アーティスト自身がちゃんと自覚した上で、全体の像が成り立っているからなんだと思う。
