ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年01月28日
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 ああ、ブリリアントだよ、との喝采を送りたい。『光の海』は、小玉ユキ(旧コダマユキ)にとって初の単行本であり、じつはこのマンガ家ははじめて読むのだが、ひととおり目を通したら何よりもまず、ひじょうに幸福な気分で、心から、掛け値なしに、とても素敵な才能だなあ、と思う。表題作「光の海」をはじめ、「波の上の月」「川面のファミリア」「さよならスパンコール」「水の国の十人」の、五つの短篇が収められている。「光の海」や「川面のファミリア」あたりは青年誌に載っていても違和感がなさそうな内容なのだけれど、すべての篇が、現代の日常をベースにしながら、人魚が、人間社会の近くで自然に生息している世界を舞台にしていて、いろいろな事情を抱えた人びとが、人魚たちとの交流などを通じ、すこし、成長する様子を描いている。その語り口、あるいは質感、または登場人物の息づかいに、一際だったチャームが備わっており、そうしたことが、喪失や失恋、出会いや別れ、といった普遍的であるがゆえに有り触れているともとれる主題のなかに、ある種の独特な叙情を顕在化させている。白とのコントラストを大事にするかのような、はっきり、黒く濃い流線と、多くの場面を引いて捉まえた構図が、ひとコマひとコマの持つ物語性を高め、それを連鎖反応的に並べてゆくことで、ワン・エピソード総体の情緒を深めているみたいだ。けっして少なくはないモノローグが、ひじょうに効果的に生きているのも、地の、画の部分がしっかりとしているからである。ときどき見せるユーモアのセンスもいい。「光の海」で、人魚がワカメに八つ当たりするところとか、くすり、とさせられる。これはもちろん、たんに描写が可笑しいからだというだけではなく、作品に溢れるやさしさに触れることでもたらされた、そういう微笑みでもある。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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