ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2013年01月25日
 爆音伝説カブラギ(6) (講談社コミックス)

 戦争は止められるか。このような問いを、佐木飛朗斗が原作のヤンキー・マンガは喩えとして強く抱いているのだったが、ああ、しかしついに戦争がはじまってしまう。『爆音伝説カブラギ』の6巻では、誰かを殺された憎しみが誰かを死なせた悲しみを上回るとき、戦争は不可避になるという状況が描かれていく。

 鏑木阿丸を中心に一枚岩となった十六代目・爆音小僧が集会へ繰り出そうとする夜、免れえぬ怨念を理由に二つの巨大な勢力、朧童幽霊(ロードスペクター)と魍魎とが直接の対決を目の前にしていた。朧童幽霊の天目尊は、兄である七代目総長の駆を魍魎の十九代目統領の九曜幸叢によって殺されたと信じ、全存在を懸けてまでその仇を取らなければならなかった。また魍魎が以前にも増して結束を固くしたのは、九曜の妹である礼奈が朧童幽霊に殺されたと信じられていたためであった。礼奈と駆が実は好き合っていたと知る九曜の恋人、瑠美子は秘められた真相を阿丸に告げるが、しかし因縁はあまりにも込み入りすぎていた。すべてが一触即発のまま、爆音小僧が、朧童幽霊が、魍魎が、国道に爆音を響かせる。〈あ――? 相手ェ 何人何台カンケー無ェゾ? “対人(タイマン)”だろーが“戦争”だろーが“上等”だぜ〉

 平行軸というか水平軸というか、横線上の対立に紙幅を割き、膨らみ上がった相関図を一個の世界あるいは宇宙として機能させる。この極端性が佐木の作品の大きな特徴を担っているのだけれど、そこではしばしば時間の存在が失われる。本来は24時間と定まっているはずの一日に、決して収まりきらないであろういくつもの事件が描かれるのである。結果的にそれは、戦争がなかなかはじまらない前夜に登場人物を延々と引き止めるかのような措置になっていると見ることもできたと思う。だが、『爆音伝説カブラギ』において不良少年たちは意外なほど速やかに全面的な衝突を迎える。

 過去の回想は筋書きを明瞭にしている点も含め、時間の垂直軸が物語の動力とほとんど一致しているためである。もちろん、この勢いで爆音小僧VS朧童幽霊VS魍魎の三つ巴に決着がつくわけではないのだろうし、ここからさらに二転三転する展開が待っているに違いない。しかし時間の垂直軸によって、ネガティヴなモチベーションに煽られながら戦争がはじまるべくしてはじまる、その局面が顕著に示されることとなっている。

 戦争は止められるか。このような問いは、まだはじまっていない戦争に対して投じることが可能であるし、すでにはじまってしまった戦争に対して投じることも可能である。いずれにせよ、戦争が不可避となるような状況のなかで発せられるものであろう。

 以前にも述べたのだけれど、佐木の作品によくいるタイプの消極的な主人公と阿丸は違っている。むしろイケイケの鉄腕ぶりに主人公としての真価が現れている気さえする。たとえば『疾風伝説 特攻の拓』の浅川拓や、この『爆音伝説カブラギ』と同じく東直輝とコンビを組んだ『外天の夏』の天外夏が、穏健派に近かったのとは性格が異なっているのである。では、鏑木阿丸に託された役割とは何か。そうであってもやはりどこかで戦争を止めることであって欲しいと思う。


 2巻について→こちら
 1巻について→こちら

・その他佐木飛朗斗・東直輝に関する文章
 『妖変ニーベルングの指環』1巻について→こちら
 『外天の夏』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら

・その他佐木飛朗斗に関する文章
 『疾風伝説 特攻の拓 外伝 〜Early Day's〜』(漫画・所十三)
  1巻について→こちら
  2巻について→こちら
 『爆麗音』(漫画・山田秋太郎)
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら  
  1巻・2巻について→こちら
 『パッサカリア[Op.7]』について→こちら
 『[R-16]』(漫画・桑原真也)12巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2013)
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