ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2013年01月23日
 ロマンチカ クロック 1 (りぼんマスコットコミックス)

 槙ようこのキャリアを通してみると(妹である持田あきが原作であってさえ)大きく二つの理想がイメージされていて、つまりはそれが作品の主だった柱を作り出しているように思われる。理想の一つは、学校は楽しい場所であるべきだということであろう。もう一つは、家族はかけがえのないものであるべきだということである。もちろん『りぼん』のイズムを反映した結果にすぎないのかもしれないが、実際に槙のマンガにとってチャーミングなメリットとなっている点に変わりはないのだし、そうしたメリットは当然この『ロマンチカ クロック』の1巻にもよく出ている。

 ヒロインは明るく活発な14歳の少女、杏香音だ。彼女には双子の兄、蒼がいる。しかし蒼は杏香音と正反対の性格で、口数も少ないし、引きこもりと見なされている。それがとあるきっかけで学校へ顔を出すようになり、明晰な頭脳と持ち前の容姿を高く買われ、生徒たちの人気を集めはじめると、目立ちたがり屋の杏香音は気に食わない。そもそも仲睦まじい兄妹ではなかったけれど、以前にも増して蒼に敵対心を抱くのだった。とはいえ、二人のあいだには、当人たちですら気づいていない確かな信頼があるようでいて、周囲の人間を巻き込みながら次第に歩幅を合わせていく。というのが、おおよその筋である。

 賑やかな学園生活を経ながら兄妹の繋がりが強まる。こうしたストーリーに、作者の、らしさ、は現れている。兄妹を中心とした友人関係や、二人を見守る家族の視線が、作品の温度を大変微笑ましく表しており、またこれによって、ラヴ・ロマンスの部分がいくらか退いて感じられるのも、作者の、らしさ、である。もちろん、ラヴ・ロマンスにあたるパートはしっかりとある。学園生活に恋愛は付き物なのである。しかしそれは(少なくとも今のところ)メインのプロットではないだろう。やはり杏香音と蒼、この兄妹の、心の距離が『ロマンチカ クロック』のテンションを上げ下げしているのだ。

 学校は楽しい場所であるべきだということも、家族はかけがえのないものであるべきだということも、現実的には絶対ではないので理想としてありうる。『ロマンチカ クロック』は、子供の目の高さで、あるいはそれが大人びていく過程のなかに、エモーションを描いている。場合によってはその幼さが、近親相姦を想像させる下世話なフックを(潜在的には存在するとしても)斥けているのだけれど、何より状況はいくらでも変えられることの可能性を素直に代弁している点が大きい。絵柄に多少の変化を加えてきているが、中身の方では従来通りの槙ようこが貫かれている。

・その他槙ようこに関する文章
 『勝利の悪魔』3巻について→こちら
 『山本善次朗と申します』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『14R』について→こちら
 『たらんたランタ』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『STAR BLACKS』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『愛してるぜベイベ★★』
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2013)
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