ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年12月25日
 イカロスの山 5 (5)

 〈結果がすべてだと? ならば魂は 魂はどこへ行くんだ 彼らの情熱はどこへ――〉。成績への欲求だけを尋ねる米国テレビ・キャスターのインタビューに気分を悪くした平岡は、その脳裏に、中途で夢を費えてしまった人びとの姿を思い浮かべる。〈おれが山に登るのは“挑戦”でも“ビジネス”でも まして“征服”でもなく――〉、では平岡が山を登る理由とはいったい何なのか。塀内夏子『イカロスの山』は、この5巻に至り、さまざまな局面において、俄然緊張感を高めてゆく。三上のクレバスへの落下、三上の妻靖子をめぐる三上と平岡の直截的な対峙、そして先ほど述べたインタビュー・シーンに、突然の雪壁の大崩落、それらの出来事は、もちろん読み手を退屈させないハイライトとなっている、が、そのことだけに止まらず、平岡という個人の、感情の巧みな表現へと結びついている。描かれる表情は、いつも無愛想であるけど、作中で起こされる幾多の事象がかわりに、その内面の基底にあるものを、読み手に垣間見せる。三上の〈おまえはそういう男だから 友やザイル・パートナーを自分のことより大切にする男だから〉という言葉には、平岡の孤独がどこからやってきているのか、ついに胸を打たれる効果がある。平岡と三上のコンビに先んじて、アメリカ隊が頂上へのアタックをかけようとするそのとき、上空を不吉な雪雲が覆う。8000メートルの未踏峰がもたらす次の試練を予感させ、物語は、次巻へと続く。

 4巻について→こちら
 3巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら

 『雲の上のドラゴン なつこの漫画入門』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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