ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年12月24日
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 大井昌和のマンガ『流星たちに伝えてよ』は、絵柄も含め地味かもしれないが、いやしかし、できれば多くに読まれて欲しい連作短篇集である。SF作品としては特筆すべきシーンは少ないけれども、作者なりの手つきで描かれた生の営みは、つよい訴えかけをもった哀切な感情の、良心的な表現たりえている。〈知ってるか? 流れ星ってただのチリが燃えて光っているんだぜ〉。その数年後、月と地球を繋ぐ一機の月航船が墜落した。乗員乗客127名はみな、爆発のなかで、死んだ。地上の人びとは、そのことを知らず、まるで流星のような、夜空を駆ける輝きを、見た。こうして、ひとつの象徴的な出来事とは無関係な、あるいは、その周辺に関わる種々のエピソードが、提示される。それぞれの登場人物が、それぞれの日常で、それぞれの悩みを抱え、生きることの意欲を弱くさせるような、いうなれば壁に突き当たっている。その壁は、他人の表情を見えなくさせ、自分のことを第一義に考えさせるあまり、信じるに値するものを隠してしまう。だが、空から降るひと筋の光が、心の奥にひっそりとしまわれていた希望を照らし、静かに思い出させる。〈前ばかり見てると気づかないこともあるのよ / 立ち止まって空を見上げる気持ちでないと――〉そのことに気づけないのである。無名の人は、よく星屑に喩えられるが、その、ささやかな煌めきが、ある場合には、とても尊く、他人の目に映ることだってあるだろう。人の一生には必ずや意味がある、というのが可能性の問題であるならば、人の一生には何の意味もない、というのも可能性の問題にほかならない。墜落を覚悟した月航船の乗客たちを捉まえた最終話が圧巻で、〈僕らの言葉を…せめて僕らの言葉を家族に伝えるため 守り抜きましょう〉という彼らのとった行動が、どのような意味を持っていたのか、物語のなかに点るさまざまな瞬間を振り返り、思わず目頭を押さえる。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | マンガ(06年)
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