ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2004年07月11日
 宇仁田ゆみのマンガからは、温度の低さのようなものを感じる。温度が低いという言い方は、正確じゃないかもしれない。それでは冷血なようである、が、そうではなくて、それはつまり、過剰なほどにドラマチックな装飾が施されていないということで、物語にはそれなりの波乱を含まれているのだけれど、見るに耐えない乱暴さはどこにもなくて、「のほほん」というか「ほのぼの」というか「のんびり」とした空間が、描写のなかに広がっている。温度は低いかもしれない、だが、触れる体温はあったかい。ごく当たり前のように、恋人たちは付き合い、ごく当たり前のように、恋人たちは別れ、ごく当たり前のように、新しい恋人と出会う。ああ、そうか、それは僕の人生とは無縁なことばかりで、なるほど僕は、そのようにして存在する世界そのものに憧れているのかもしれない。
 この短編集から一編『エバグリン』を取り出してみると、そこではほとんど脈絡のないままに一組の男女の恋がはじまるのだけれど、ふつう脈絡がないということは、相応のエネルギーが放出されていなければ、誤魔化しが効かないので前後の繋がりがおかしくなるものだが、しかし、女の子がひとり頭のなかで膨らます妄想でさえも、やがてゆったりとした眠りのなかへ吸収される、熱烈なセックスではなくて、布団の柔らかさが、目には見えない底のレベルで、彼女と彼とをしっかり結びつけるのだった。『エバグリン』は、本来ならば「EVERGREEN」という言葉であるけど、「エヴァーグリーン」の堅さを通り越して「エバグリン」と表記するとおりの丸みを帯びた、独特のやさしさが、そこかしこに漂っている。そうして恋人たちは、まるでスポンジのように、お互いに良いところと悪いところを吸い込むようにして、受け入れるのだろう。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ。
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