ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年04月08日
 『群像』5月号掲載の短編。森健に対する僕の評価は高い。もちろん、ぜんぶの作品が良いというわけではないが、そのなかにはちゃんと良い作品がある。これはどっちだろう、すこし微妙かな、と、途中まで思いながら読み進めた。まず、主語の働きかけが弱い、これは2作目であった『鳥のようにドライ』でも見受けられた傾向だが、森はどうも「おれ」以外の人物についてを語るのが上手くない。それでも物語は進む。大まかにまとめれば、「前田」というロクでなしっぽい男が車椅子の女性とセックス(性交)をする、そのときの感触によって、孤独を自覚する、という風な内容になる。他愛もない話だ。しかし、その他愛もなさが、なぜか重たい、だが、その重たさは、やはり同時に、吹けば飛ぶような軽いものでもある、という、奇妙な感覚を残す。ここらへんに森ならではの筆力が出ている。ラストで本当の語り手が現れるような、そういう突き放しがあって、それが感情移入の装置となり働く。最後の最後になって、小説のバランスをとっている。トータルでみれば、これはどっちかな、良いほうに入れてもいいかな、いやちょっと待てよ、と迷い続ける読後である。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書。
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