ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年11月24日
 僕等がいた 11 (11)

 矢野はなあ、男の子にしたら、正直なところ同調し難い面が多々あるのだけれども、今回ばかりはちょっと、悲しく、感じ入ってしまった。なにもそこまで追い込んでやらなくてもいいではないか。〈矢野のお母さん / 彼はあなたを失い / 彼が生まれてきた意味を失いました / 彼の指針を / 彼の信念を / 彼の方位磁石を / そして私たちも / やがて / 矢野を失うのです〉。姿を消す直前、矢野の身にいったい何が起こったのか、上京して以降の彼と付き合いがあった亜希子の、その回想のなかで語られる。一方、七美は〈3年前あいつに会った〉という竹内の口から、矢野の背負ってしまった苦悩を聞かされる。一年後、大学を卒業し、働きはじめた三人は、けっして忘れることはないが、前に進もうとして、矢野のいない日々を、慌ただしく生きる。小畑友紀『僕等がいた』の11巻である。ここ数巻、物語は、矢野の不在とその過去をちょうど、登場人物たちがつくる円の中心に置き、それを周回するかたちで進んできたわけだけれど、ここでいよいよ現在へ、矢野以外の登場人物たちの今へと焦点は合わされる。七美と竹内の仲は、とりたてて大きな進展を見せず、ふたりと知り合い、親しくなった亜希子は、それを心配する。もちろんようにこれを停滞ととるのであれば、次の展開を導くため、なにかしらかのアクションが、作品の内部で起こされなければならない。そのことをひとつには、竹内の〈『オレのほうが高橋を幸せにできるはずだ』と〉いう決心が担っている。だがもうひとつ、べつの角度からの衝撃を加えることで、さらなる動揺が誘われている。おそらく読み手の多くは、亜希子がたまたま目にした名刺から、矢野の再登場と、それにともなう今後の波乱とを、予感する。

 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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