ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年11月15日
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 終わった。終わった。終わった。単行本になるまで触れるのはよそうと思っていたのだけれども、だめだ、『月刊荒くれKNIGHTマガジン』Vol.11掲載の最終回、「[黒い残響]第9章――終幕」を読み終えたらたちまち、なにかを言いたい気分になった。いやいや、さすが吉田聡というべきか、超膨大な群像劇の、見事なエンディングであったよ。正直なところ、[黒い残響]が、『荒くれKNIGHT 高校爆走編』のラスト・シリーズであることがアナウンスされてよりこちら、これ、いったいどうやって終わらせるんだろう、と悩ましくあったのは、本編の主役であり、三代目の輪蛇(LINDA)である善波七五十が登場する、それ以前の時代、つまり初代と二代目の頃に関するエピソードが、[黒い残響]のメインであったからなのだが、しかし前回[黒い残響]第8章(Vol.10掲載分)で、春間が四代目を名乗った瞬間に、ああ、そうか、と、すべてが繋がった。そもそも『荒くれKNIGHT』(無印)は、まだ小僧であった春間が、輪蛇入りを果たしたことで幕を開けている。そうして春間が、輪蛇とはどのような存在であるのかを知っていく、あるいは、かっこういいとはどういうことかを学んでいく過程が、そのまま読み手の関心と重なり、物語内部の時間を動かしていたのである。だが、春間の視点に限定されたところからでは、こぼれ落ちていく面も多々あった。とくに全編に渡り通底音のように響いていた、初代から続く「がらがら蛇」との因縁は、その最たるものであろう。じっさい『荒くれKNIGHT』(無印)が終盤に、春間の周辺の物語から、善波の周辺の物語へと、そして善波の滅茶苦茶な高校生活を主とする『荒くれKNIGHT 高校爆走編』へと、位相を変え、リニューアルされたのは、そういったことと無関係ではあるまい。やがて『荒くれKNIGHT 高校爆走編』は、それまでに拾い上げられなかった伏線を回収する段階に入り、三代目輪蛇たちが過去と現在に結着をつけ、そして輪蛇そのものの未来である四代目たちを模索するくだりを経て、[黒い残響]へと至ったわけだが、[黒い残響]で捉まえられていたのは、要するに、輪蛇のメンバー個々人のではなくて、輪蛇というグループそれ自体の過去であった。こうしてすべての伏線が一通り揃えられたうえで、とうとう最終回を迎えた。〈善波七五十は走り続けてるぞ〉とヒデオが告げ、〈まだまだ三代目輪蛇とのレースは長くなりそうだぜ!!〉と虎武羅(COBRA)の伊武が言う。ページ下部にあしらわれた二匹の蛇のマークは、メビウスの輪を思わせ、まるで∞(無限)を暗示させる。続編が描かれることがあるのかどうかはわからない。だが、描かれることなどなくとも、黒い太陽が、いつまでも暗く惨めな路地裏を照らしていることを忘れてはならない。人はどんな状況であれ、自分と、自分を信じてくれる人間が見えなくなってしまえば、もはや何者ですらもないのだ。とはいえ、そうしたメッセージは、じつはすでに同作者の『ジナス』へと持ち越されており、『ジナス』の1巻にあった〈ジナスを見た者はジナスに覗き返される〉という印象的な台詞は、『荒くれKNIGHT』(無印)の4巻で善波七五十が口にしたものの、ヴァリエーションに他ならない。〈覚えときな……深い闇の淵を覗こうとする者は その時深い闇からも覗き返されているのだという事をな……!〉。だから光を。

 『荒くれKNIGHT 高校爆走編』9巻について→こちら
 『荒くれKNIGHT 高校爆走編』8巻について→こちら

 『ジナス』1巻について→こちら

 『湘南グラフィティ』→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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