ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2012年05月27日
 Pop War

 ポップ・ウォー。近年、ここまでときめかされるタイトルはそうお目にかかれないぞ、というぐらいに決まっている。元THE HELLACOPTERSのニッケ・アンダーソンが率いるIMPERIAL STATE ELECTRIC(インペリアル・ステイト・エレクトリック)のセカンド・アルバムである。バンド名を冠した2010年の前作が極めてソロ・プロジェクト的であったのに対して、今作の『POP WAR』はTHE DATSUNSのベース、ドルフ・ドゥ・バーストなどを正式なメンバーに含む、バンド編成で制作された。それもあってか、楽曲の印象はよりシャープに、タイトかつコンパクトにまとまっている。

 もちろん、THE HELLACOPTERSの後期と同様、疾走感を失わないままに黄昏れたサウンドが何よりの基本線であって、オーセンティックであることを最大のテーマにしたスタイルは、レトロスペクティヴだと言ってしまって構わないだろう。しかしそれがどうしたっていうんだ。THE HELLACOPTERSが08年に出したラスト・アルバムの『HEAD OFF』は、実はマイナーなバンドのカヴァー集であったと(最初は秘密にされていて)後に明かされたが、そこで発露されていたのは、結局のところ、ロックン・ロールにおけるシンプルなビートの、とりわけエヴァーグリーンな魅力をいかに抜き出せるか、という巧みさであり技法であった。IMPERIAL STATE ELECTRICの『POP WAR』もまた、いや日本盤のボーナス・トラックを除く全10曲が自作自演のオリジナル・ナンバーであるものの、おそらくそれと本質は等しい。

 要するに、ロックン・ロールに初期衝動やセンセーショナリズム等のタグを付けるような立場とは異なったところでピュアなロックン・ロールを再現しているわけだ。エヴァーグリーンとは、つまり、そういうことである。

 冒頭を飾る「UH HUH」の実に玄人な味わいであることよ(詠嘆)。2分にも満たないナンバーだが、軽妙なリズムに乗じながら〈ア・ハー〉と繰り返されるフレーズがとにかくキャッチーであって、気がついたら一緒になって口ずさんでいるほど。掴みとしてはこの上ない。ああ、軽い溜め息にも甘い囁きにも似たメロディのせつなさときたら。アルバム全体を通して言えることなのだけれど、北欧(スウェーデン)のバンドだから、という理由で済ませてしまっていいものかどうか、もうよくわからないぐらいの哀愁こそが一つの個性となっているのは、既に述べたとおりTHE HELLACOPTERSの後期とイメージの重なるところ。コーラスに差し掛かって〈IN THE DRIVING RAIN〉と歌われる4曲目の「BACK ON MAIN」ではないが、雨の日にドライヴでアクセルを踏んだ瞬間、ぴったりとはまるサウンド・トラックのようでもある。

 必ずしも線の細いわけではない2本のギターが、しかしデリケートに絡み合う。ベースのラインは、ヘヴィであるというのとは別のレベルで、太いグルーヴをうねらし、メロウなムードのなかにあってもドラムのアタックは強い。ニッケのヴォーカルは以前にも増して渋く、雨の日のドライヴにはまりそうでありながら、その情緒はひどく乾いている。ある種の二律背反を持ったロックン・ロールが見事に成し遂げられているのであって、もしかすれば『POP WAR』というアンビバレントなタイトルはそれを暗示しているのかもしれない。比較的、スローにダウンした5曲目の「WALTZ FOR VINCENT」からこぼれてくる物憂げな旋律にはまったくたまらないものがある。

 日本盤のボーナス・トラックを除けば、トータルにしてわずか30分強の内容だが、アナログ(ヴィニール)のA面とB面を意識した構成がされていることは明らかで、A面にあたるパートは、フックを満載した「UH HUH」ではじまり、今しがた挙げた「WALTZ FOR VINCENT」で締め括られる。こうした並びは非常に鮮やかであるし、大変メリハリが利いているのだけれど、実はB面にあたるパートの方が盛り上がりを重視した仕上がりになっているのではないか、という気がする。6曲目の「SHELTERED IN THE SAND」で弾けたビートは、ラストに置かれた10曲目の「ENOUGH TO BREAK YOU HEART」まで緩むことがない。所謂ガレージ・ロックのノリを期待するなら間違いなくこちら。THE HIVESにも負けないエネルギッシュな8曲目の「MONARCHY MADNESS」にそれは代表されているだろう。

 いずれにせよ『POP WAR』には目新しくはなかったとしても決して古びれないときめきが宿っている。ストリングスを配した「ENOUGH TO BREAK YOU HEART」の終盤に広がるサイケデリックな色彩は、先般デビュー作をリリースしたデンマークのTIM CHRISTENSEN & THE DAMN CRYSTALSにも通じるものだ。出身地や方法論は違えど、72年生まれのニッケ・アンダーソンも74年生まれのティム・クリステンセンも、両者ともエヴァーグリーンであることを目指した同時代の、そしてほぼ同世代のアーティストだと付け加えておきたい。

バンドのオフィシャル・サイト→こちら

・THE HELLACOPTERSに関する文章
 『HEAD OFF』について→こちら
 『AIR RAID SERENADES』について→こちら
 『ROCK & ROLL IS DEAD』について→こちら
 『STRIKES LIKE LIGHTNING』について→こちら 
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2012)
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