ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年11月10日
 さよなら純菜 そして、不死の怪物

 八木剛士、ついに起つ。どんなに駄目でも自分で自分を変えられない人間なんていないんだ、とすれば、ふつう、多くの心弱い人間を勇気づけるような、励ますかのような、ポジティヴなメッセージが成り立ってもよさそうなものだが、いやいや、もちろんそうなってはいかない、これぞまさに浦賀和宏のマジックである。前エピソード『八木剛士史上最大の事件』を通じ、絶望の果てを垣間見た剛士に、やさしく手を差し伸べ、〈私達は、決して間違いで生まれてきたのではないないということを〉教えてくれるものは、もう誰も、どこにもいない。いくら不死身の《力》を持とうとも、喪失の苦悩が、内側からすべてを激しく焼き尽くそうとするとき、ただただ悪魔を思わせる叫びをあげる。そして、そのような個人の抱える苦悩をよそに、大状況を動かしかねない、不吉な計画が暗部で動きはじめるのだった。という具合に、これまでなかったぐらい物語的な話の運びと、相変わらず屈折した批評性の入り混じる語り口は、もしかするとこの作者の出発点ともいえる、安藤直樹のシリーズを彷彿とさせるほどに、不条理と自意識の圧倒的な世界を開示している。お肉も食べるし、ね。『インビテーション』誌の10月号で、浦賀はインタビューに答え、〈今後の展開やラストはどうなるのかなどは、かなりきっちりと考えてから始め〉たこのシリーズは、『八木剛士史上最大の事件』で〈大体、全体の半分くらいまで来たところ〉だといっているけれど、するとここからが折り返しになるわけで、『さよなら純菜 そして、不死の怪物』という題名に暗示されているとおりの不穏な内容に、ハッピー・エンドの確率がかなり低まったことを意識させられた。

 『八木剛士史上最大の事件』について→こちら
 『上手なミステリの書き方教えます』について→こちら
 『火事と密室と、雨男のものがたり』について→こちら
 『松浦純菜の静かな世界』について→こちら

 「リゲル」について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(2) | 読書(06年)
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浦賀和宏『さよなら純菜 そして、不死の怪物』(講談社ノベルス)
Excerpt: 浦賀和宏『さよなら純菜 そして、不死の怪物』を読んだ。 シリーズ5作目。時節到来...
Weblog: 書評風-読んだら軒並みブックレビュー
Tracked: 2006-12-08 02:08

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