ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年11月06日
 EDGE

 うんうん、なるほど、これは、たしかに評判がよいのも頷ける、頷かざるをえないほどに際立ったエンターテイメントであったよ。この、とみなが貴和の小説『EDGE』は、解説で大森望がいっているのをみると、もともと99年に〈女の子向けライトノベルのレーベル〉講談社X文庫ホワイトハートから発表された作品らしいのだが、いやいや、文章にしても話の運びにしても、けっこう硬質な内容であり、このたびこうして講談社文庫に体裁を変え、より広い層へとアピールされるだけの価値は、十二分に、ある。と、じっさいに、だから手にとる気になった僕は実感を込めて言える。わずか一年足らずのあいだに〈東京タワー。レインボーブリッジ。新宿都庁。サンシャイン60の隣に立つ、白く優美なオベリスクのような、ゴミ処理場の巨大な煙突〉が次々と爆破、倒壊されるが、しかし犯行声明はなく、またこれまでの事件で誰も死者を出していない、その謎の犯人を指し、マスコミは「黄昏の爆弾魔(ラグナロク・ボマー)」と呼んだ。いっさいの手がかりを掴めず、捜査に行き詰まった警視庁は、三年前のとある悲劇的かつ猟奇的な事件を境にし、姿を消した一人の人物を、見つけ、ふたたび現場に呼び戻す。だが、若くして天才的な心理捜査士(プロファイラー)大滝錬魔は、過去に失った大きなもののために、その要請を拒否しようとするのであった。このように、プロファイリングでもって犯罪者が確定されてゆく過程に、登場人物たちの、それこそプロフィールに関わる諸要素が絡んでくる、というのが、おおまかな筋であり、そうして構築されていく時間がそのまま、スリリングな劇となっていて堪らないのだけれど、今このタイミングではなくて、7年前にリアルタイムで読んでいたら、ここまで愉しめなかったかもしれないなあ、と思うのは、ある登場人物が超常的な能力を携えているという、ちょっとマンガ的すぎる造型や、(この講談社文庫版でいうと)P268における爆破場面の、直截的すぎる描写などを、もしかするとマイナス点と捉まえてしまった気もするからで、とはいえライトノベルふうの想像力が効果的である現在ならば、むしろ表現の立ち方としては有用に感じられる。またサイコな犯罪やプロファイルという題材も、99年の時点だったら、ことによると使い古びている、という具合に受けとってしまった可能性もある。が、そちらもスタンダードな様式としてすでに定着している以上、今さら、設定が新規かどうかでその価値を判断することもない。要は、質の高さに還元される。いずれにせよ、自分の読書暦を顧みるに、ここまでこれ以降のエピソードが気にかかるシリーズものは、たぶん森博嗣の初期のころ以来ではないか。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書(06年)
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『EDGE』とみなが貴和
Excerpt: EDGE(エッジ)とみなが 貴和 (1999/10)講談社この商品の詳細を見る  私には、犯人が見える──!!プロファイリング──それは、犯行現場に残された遺留品や犯行手口そのものなどから犯人像を..
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Tracked: 2007-05-26 11:58
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