ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2012年04月29日
 蒼太の包丁(33) (マンサンコミックス)

 最近、情報誌や書店などでグルメ・マンガが特集されているのをよく見かけるが、この作品が取り上げられているというのはほとんどないような気がする。それはたぶん、『蒼太の包丁』が、テレビのヴァラエティやワイドショー的なコンセプトではなく、テレビのドラマに近いタイプの成り立ちをしているためだろう。換言すれば、ワン・カットやワン・ショットの強度ではなしに、時間の軸をベースとしたストーリーに重きが置かれているのであって、料理自体の描写や紹介がどうというより、そのストーリーに乗れるかどうかで判断されるきらいがあるからなのだと思う。まあ人情とロマンをミックスした話の筋は、いくらかオールドスクールであるし、要するにヒップじゃないんだ。けれども、地味ながら徐々に積み上げられていく物語の確かさこそが、やはり『蒼太の包丁』の魅力にほかならないわけである。

 長期連載作品において、物語=時間の経過をどうアピールするか。一つには、主人公の立場や環境に変化を加えることが挙げられる。そしてもう一つには、過去の登場人物をカムバックさせ、それとの対比によって、先の変化を如実にするなどが挙げられるだろう。これらの手法の駆使が、ここ数巻『蒼太の包丁』を支えてきたのだが、無論、この33巻も同様である。中学生になって再登場した時藤啓一と黒坂千鶴の成長を描くなかに作品の足跡が現れているのであって、また過去のエピソードから引っ張ってこられた意外な人物と花ノ井清一の交際が、主人公の北丘蒼太に、人の上に立ち、店を切り盛りしていくことの難しさをあらためて教える機会になっている。それにしても本作の誠実さは、絶え間ない努力を力強く肯定する一方で、それが無条件の正解とはならないことをシビアに突きつけてくる点だと思う。おそらく、正解のない世界だからといって努力を容易く手放すことも非常に愚かしいという態度がそこでは貫かれている。

 30巻について→こちら
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posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(2012)
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